2013年のスネファン・ドノソ

俺は相変わらず袋の中に居る
両耳と両目と両方の鼻孔と 口 ケツの穴 尿道
合計9つの身体の穴を塞がれて
手足を切り落とされて


チリだかアルゼンチンだかボリーバルだかの南米の魔女の話しによると 
それを施され袋に入れられた赤ん坊は インブンチェという怪物に生まれ変わるらしい


だが 相変わらず俺は袋の中だ


  瞼を糸で縫われている為に何も見えず
  (見えたとしても袋の中側だけだがな)
  耳たぶを何重にも折り畳まれ糸で縫われている為に一切 音が聞こえず
  (まぁ 振動で少しは聞こえるんだがな)
  唇と鼻孔を糸で縫われている為に呼吸も僅かしか出来ず 食事も出来ずに
  (なぜ俺は生きているのか)
  肛門と亀頭の先を糸で縫われている為に排泄も射精も出来ずにいる
  (そもそも食っていないし 射精の相手もいない 手も無いので自慰行為も出来ないのだがな)

 
それなのに 俺は怪物に変っていない
只の迷信なのか 何かが怪物になるのを阻止しているのかは分からない


俺は俺を中途半端な存在だと感じている
なぁ? 俺の状態で生きていては もはや人間とは言わんだろう?
だが怪物ではない 俺は女をさらってその生皮を剥いで 生き血を啜ったりはしないぞ


そんな状態のまま ドノソの夜のみだらな鳥達は何処かへ消え
百年の孤独なども訪れずに 時は過ぎ
周りの状況もなにもかも分からなくなってしまった


だが自分からここを出る事は敵わんのだ
なんせ手が無いのでな
(比喩表現ではなく本当にな)