彼女達は夜に眠れない


彼女達は完成していた
産まれながらに全てを持っていた
それを子宮に例える事もできる
欠陥も無い 汚点は認めない しかし十分に把握している
それは厄介ごとにも例えられる


成長と同時に世界を作って行く
判別の能力はどんな事より秀でていた
間違えた判断はしない しても自分を正当化する事は躊躇わない
なにより同意を求めた


男がマスタベーションの回数と趣旨に悩んでいるとき
彼女達は気違いを無視する事が出来た
出来なかった者はセックスを行う事が出来た


全ては累積する
苦しみは夜に現れる
彼女達は年を取るごとに眠る事が出来なくなった


生花を茎からもぎ取る
ベットに花びらをばらまく
マリア・カラスが歌うアヴェマリアのCDをセットする
大量の睡眠薬を一杯の赤ワインで胃に流し込む
そこに横たわり美しさの中で一人死のうとする


数十分後
彼女達は強烈な吐き気を感じる
死に場所は汚したくない
急いで起き上がる 花びらが辺りに散乱する
胃酸を喉に感じながらトイレに這いつくばり近づく
その途中 胃の内容物が逆流して器官が塞がる 息が出来ない
CDは入れ間違えていた スピーカーからはいつか貰ったクリスマスBGM集からジングルベルが流れる
カーペットに昨日食べた牛肉と玉ねぎのカスを鼻から吐き出す
涙と鼻水が交じった顔でそれを見つめながら床に突っ伏す


彼女達は美しい死に場所も トイレにも近づく事なく
吐瀉物にまみれて自殺した







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