StringQuartet No.1 2nd Movement/弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章


Youtube版ではなぜかノイズが乗ってしまっています。下記のリンクが推奨です)



2nd Movement Waltz
この作品は……
曲とコンテキストを合わせて1つの作品になっています

楽曲と対になるコンテキスト
(下記に書かれている物と内容は同じですが、こちらの方が読み易いと思われます)

高音質/高画質の動画 (こちらはノイズが乗ってません 推奨)

この動画の曲のみや、その他の音源(動画なんていらない、という方にはこちらが推奨)









【Introduction/イントロダクション】


String Quartet No.1 2nd Movement
弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章


ワルツ
過去 このダンスそしてダンスミュージックの起源を多くの国々が主張して来た
共通点は1つ 一組の男女が身体を寄せ合い相手を変えずに踊る事


過去 人が人である以前から多くの踊り(そしてその為の音楽が)が存在した
神に捧げるもの 集団体験を得るもの
(それは部族であり 戦争であり 宗教であり 日常からの開放の場であった)
芸術/娯楽の見せ物 貴族そして庶民の社交の場
そんな中 いつの間にか誕生した 一組みの男女の為の踊りはあまりにも刺激的であった


国によってはワルツは法律で禁止され また道徳的観念から忌み嫌われる事となった
しかし人々はその魔力の誘惑に逆らう事が出来ず やがて屈服する事になる


ワルツ
このダンスと音楽の歴史はこう呼ばれる


スキャンダルの歴史




                                                                                                                                                                                                                                                                            • -



この曲を以下の人々と物々に捧げます



ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ヨハン・シュトラウス(息子)
カール・マリア・フォン・ウェーバー
アラム・ハチャトゥリアン
・マイルス デイヴィス(クールの誕生)
・ファビオラ カンチェラーラ


・39.1℃の高熱
・細菌性腸炎


・2箱のゴールドシール ペティト 
・2本のフィリーズ・ブラント・ミント
・エギュベル ジョーヌ
・エギュベル ヴェール(ソーダ割りとトニックウォーター割り、流石にストレートは甘過ぎた)
・アイラモルトソーダ割り
・ジョンコリンズ
ボンベイサファイア
・買えなかったタンカレー
・スペイン産の最低に安いスパークリングワイン
・11本のクラブソーダ(ペットボトル)
・5本のトニックウォーター(瓶)
・イチジクの生ハム巻き
・ブルーベリジャムとハムを乗せたトースト
・牛肉とパイナップルの炒め物
・苺ジャムとソーセージの和え物
モンブラン
・11個のハンバーガ
・最近オープンした駅前のバーガーキング
・プリンミルフィー
・3枚のジャケット
・2枚のジレ
・6枚のシャツ
・2枚のポロシャツ
・7本の(ジーンズを除く)パンツ
・2足のブーツ


・MadMen
・クリミナルマインド


・全ての出会いと別れ
・あなた達







【Introduction2/イントロダクション2】


さようなら ミスターランナー
さようなら シュトラウスの父上
こんにちは シュトラウスの息子
(1844年 10月17日 ウィーンの新聞より)


ウェーバーのワルツ”舞踏への勧誘”この曲により完成したワルツの形式は
シュトラウス(父)と彼の友であり後のライバルであるヨーゼフ・ランナーの代により完成され発展して行く


ビアレストランの息子として誕生した(ラデツキー行進曲でも有名な)シュトラウス(父)は
後にウィーン最初のワルツ王となり
その地を宮廷舞踏会音楽監督として征服し
フランスを盛大な人気で征服し
イギリスを女王の承認により征服する(彼の楽団は外国人にも関わらずヴィクトリア女王戴冠式で演奏した)


ワルツ王は家庭を持っていたが
彼の隣には常に(多くの)若い愛人が寄り添っていた
王は彼女達に宝石やドレスをプレゼントした
彼女達はお返しに多くの子供を王にプレゼントする事となる
彼は家庭を省みなかった(王の性格と職業(盛大な人気)では家庭を征服できなかった)


そんな状況に王の正式な家族は反発を抱く
彼と彼の家庭を長年支えていた妻は王を倒す決意を固める
その考えに王と同じ名前を持つ長男ヨハン・シュトラウスも賛同する


このワルツ王に対する革命計画を 王はありとあらゆる手段で潰そうとする
しかし音楽を多くの教師に学んだ息子は ついに自ら組織した楽団でデヴューする事になる
(父が息子に教えた唯一の事は聴衆を魅了するヴァイオリンの構え方(ポーズ)だけであった)



舞台はシェーンブルン宮殿の隣に建つ
600名収容可能な著明な社交場 ドムマイヤー
集客は満杯
結果
この日のメインを飾る息子作曲のワルツは19回ものアンコールを受ける


この日からシュトラウスといえば息子の事を指し
ワルツ王は父親と呼ばれる事になった
こうして 革命は成った
後に世界で一番有名なワルツ "美しき青きドナウ" を作曲する事になる新しいワルツ王が誕生する


ワルツは常にスキャンダルに塗れている





【コンテクストについて】


これから書かれるのは
この楽曲におけるコンテキスト(背景)つまりは曲を補足あるいは補強する文章(テキスト)です
言葉が存在しない楽曲と 音楽が存在しないこの文章は対になっており
このテキストを補足あるいは補強する物として楽曲があります
この作品は それらを合わせて1つの創作物として存在しています


楽曲とテキスト、どちらかが先に存在したのではなく
これらはほぼ同時に制作されました


コンテクストは曲を彩るコンテクストと
曲を深化するコンテクストの二つに別れています

彩りは純粋に曲に対する説明です
深化は作曲者の曲に対する内面が描かれた不純な文章になっています
しかし この純粋と不純は常に反転しています
二つの文章自体も対になっており 合わせて1つとして存在します








【Context Coloration/コンテクスト 彩り】


《序奏 (立ち上る) 白 / (Erhoehte) weisse》(0:00〜2:17)
ゆっくりと時間をかけて陽が立ち昇る
それは決して地平線や水平線から出処ものではない
空中に霧が立ち上るが如く 気がつけば辺り一面に
彼/彼女の中で物事の始まりを感じる
始めの踏み込み 鼓動 



《ワルツ1 回想 メリーゴーランド/Erinnert Carousel》(2:17〜2:45)
思い出を振り返る時間は常に短い 次の展開は何時も急かし現れる
待つ事を許してはくれない 今この時も万物は流転する
メリーゴーランドの様に同じ円を描く事は無い
想い出すら



《ワルツ2 引力(魅力)/Attraktion(Attraktion)》(2:45〜3:33)
何を惹き付けるのか 何を惹き付けないのか
過去そこに多くの喜劇と悲劇があっただろう
望んだ人が振り向かない 望んでいない人が振り向く
望んだ人が振り向く 望んでいない人が振り向かない
どれが良いのかは何時までも解らない



《ワルツ3 かっこう(女性)/Kuckuck(Frauen)》(3:33〜4:14)
冷やかな風吹く草原や森林の樹々に止まる彼の鳥が鳴く
高音伸びやかな声はフルートやピッコロの音色に例えられる
他の鳥の巣で守られている卵を落とし 自分が産んだ卵とすり替えると云うけど
今はそんな事は気にせずに 鳥の歌で踊りましょう


歌うのはオスのみ
貴方はどんな歌を歌うのかしら


かっこう
かっこう



《ワルツ4 野うさぎ(男性)/Der Hase(Maenner)》(4:14〜5:02)
うさぎ うさぎ うさぎが跳ねる
彼の山をうさぎがはねる 大地を蹴りあげ跳躍する
上がる土煙 風を切る音 太陽を反射した水面を映す瞳
その姿は彼女のようだ


1.両後脚の周囲に切れ込みを入れる
 右手で足を持ち左手で皮を持ち 皮を頭の方向へ引っ張り剥がす
2.皮を前脚の先まで剥がしたら前脚と首の所で皮を切り離す
3.後脚を切り取る
4.腹部に切り込みを入れ内蔵を取り出す
5.背中の腎臓を外し 腎臓の周りの脂肪を取り除く
(腎臓/肝臓は調理出来るので取っておく)


うさぎのポシェ/うさぎのパンチェッタ巻きロースト/うさぎのソテー マスタードソース/
マクレガーさんのパイ/うさぎのビール煮/うさぎ肉のソーセージとハム



《ワルツ5 感傷的な安心/Emotionale Sicherheit》(5:02〜5;54)
傷つ事で平穏を感じる事が在る
逃避に準ずる 特に人間関係においては
知らずに行えば毒を孕む物
用法と容量を守るべき物



《ワルツ6 無題/Untitled》(5:54〜9:22)



《ワルツ7(ワルツ2の繰り返し) 引力(魅力)/Attraktion(Attraktion) 》(9:23〜10:07)
何を惹き付けるのか 何を惹き付けないのか
過去そこに多くの喜劇と悲劇があっただろう
望んだ人が振り向かない 望んでいない人が振り向く
望んだ人が振り向く 望んでいない人が振り向かない
どれが良いのかは何時までも解らない



《ワルツ8 指す光(序奏コーダ)/Punkt Licht(Einleitung Coda) 》(10:07〜10:56)
時にそれは光を指す
立ち昇り普遍する物でも 遍在する物でも光は光だ
時間は光に随伴する
次の展開は何時も急かし現れる
純粋と不純は 幸運と不幸は常に反転する
沈みの癒し 歌う鳥 地を跳ねる獣
ルーセル 回り続ける 変化を伴って
全て抱いて 手を取り合って





【Context Deepening/コンテクスト 深化】



《序奏 立ち上る白/Rising white》(0:00〜2:17)
《或るいは — 夜の鳥/Birds appear at night)》


玄関。木製の扉。開けると革靴が2足、スニーカーが2足。合計4足
赤いステンレスのキーボックス。鍵は4本。
靴入れの上にガラスの花瓶。白いトルコキキョウが6本。
五日前、私が持って来た物だ。その時は7本あったはずだが。
「そのほうが美しくて完璧だろ」


部屋。2人掛けの白い馬革のソファー。ハラコのクッションが2つ。
フローリング。白いラグマット。白い壁紙。彼はタバコを吸わないので白いままだ。
ここに越す前は吸っていたが、あまりに苦労が多いからと禁煙した。


喉が乾いた。冷蔵庫を開ける。
扉の棚に卵が8つ。
本体の4段ある区切りの下から2段目にビールの缶が8本。
向きはそれぞれバラバラ。右と左に4本ずつ纏めらている。


2本取り出す。一本を彼に渡す。


「昼はトーストと卵二つでスクランブルエッグを作ったよ」
シンクの三角コーナーを見る。
卵の殻が三つ分。2つは半分に割れたまま。一つは粉々にされ白身と黄身で泡立っている。
彼に喫煙の習慣が在った時も同じ事をしていた。
《タバコ箱の封を切る。20本のタバコ。
 一本取り出す、ライターで火を付け唇へ運ぶ。
 もう一本は折って捨てる。箱の中身は18本》


ソファー。テレビを付ける。46チャンネル。
ニュース番組。男性のキャスター。白髪。紺のスーツ。ラベルが小さい。ネクタイ、赤。
男性キャスター、読み上げる《アフリカ。紛争》
翠色のガラスのテーブルにビールを置く。北欧製。
男性キャスター《銀行強盗》
コマーシャル《洗剤/柔軟剤。肌にも優しい。赤ん坊》
コマーシャル《車/高級。上司部下。演出》
コマーシャル《電気屋/セール。エコ》
コマーシャル《銀行/ローン。信頼》
コマーシャル《ドラマ/第二シーズン。新しい問題》
ニュース。男性キャスター《井戸に落ちた犬、救助》
「一クールは元々十三週間で一つの単位なんだけど、最近では12週で終わりになるんだ」


彼。白いTシャツ。胸元には汗が滲んでいる。壊れっぱなしのエアコン。
私の腿に置かれた手。男性にしては長い。爪は短い。
付き合い出した当初も短かったが、爪先はガタガタだった。
だから、爪切りをプレゼントした事があった。
薬指より長い人差し指。
男性キャスター《俳優、不倫》
ビールを飲む。テーブルに戻す。


キス。
2回下唇を噛まれる。
アルコールを摂取すると柔らかい男性の唇が欲しくなる時がある。
男性キャスター《高層ビル完成》
舌の先と先を擦り合わせる。
お互いの口内に舌を入れる。
唇と唇を押し付け合い静止する。
突如、彼の唇が離れる。
「ごめん」
彼がソファーから立つ。玄関へ歩く。
背中。Tシャツが捲れている。筋肉質な腰が見える。


コマーシャル《化粧品/美白。透き通った肌》
コマーシャル《コンビニエンスストア
コマーシャル《アルコール》
コマーシャル《》
コマーシャル《》
コマーシャル《》
コマーシャル《》


彼が戻って来た。ソファーに座る。
「玄関に俺の靴が4足。君が脱いで合計五足。靴入れに一足仕舞って来た。これでまた4足」


《バラエティー番組/トークショー》女性の司会者。丸い顔、腹、手。スタジオの観覧者。
トークショー/ゲスト/孤児達に多額の寄付をしたホテル王》


コマーシャル《》
コマーシャル《》
コマーシャル《》
コマーシャル《エクササイズDVD》
コマーシャル《宝石/結婚。記念日》
コマーシャル《香水/魅了。感情》


手。胸を弄られると嫌な感じがする。
可笑しいのだろうか。そう思い友達に相談した事がある。
10人のうち4人が同じだと答えた。
トークショー/ゲスト/ホテル王/苦労した幼少時代》
コマーシャル《清涼飲料水/カロリーゼロ》
コマーシャル《お菓子/チョコレート。少女。祖母》
セオリーのカットソーを脱がされる。
散々遊んで汗や泥で汚れた服を母親に脱がされる子供の様に両手を上げる。
セックスとの違和感にいつも笑いそうになる。見つめる彼の目。
角張った頬。額。鼻筋。そのなかで綺麗な目。長い睫毛。
「肋骨は美しいね。左右対称で通常片側12本。両側合わせると24本になる」


以前。シャツのボタンが気がつくと一個取れていた事が在る。
五個のボタンが4個になっていた。三個のボタンが2個になっていた。
今。彼の前ではボタンがついている洋服を殆ど着ない。


キス。
彼の舌を吸う。彼に舌を吸われる。
上の歯を舐められる。舌の裏を舐められる。
コマーシャル《風邪薬/母。優しさ》


ディーゼルジーンズ。薄い青。丈は短い。
セックスに格好や美しさを持ち込みたいなら、細身の物を穿いてはいけない。
彼が脱がせようとする。汗ばんだ腿に引っかかる。自分で脱ぐ。乱暴に、子供の様に。
トークショー/ゲスト/ホテル王/最初の事業の失敗》


下着の上から股を手で擦られる。長い人差し指。
ショーツが汚れる。いつもそうされるので嫌だった。
注意した事もあったが、その時、彼は満足そうに笑っていた。



コマーシャル《》
コマーシャル《》
コマーシャル《》
……
……
……


シャワー。シャンプー。コンディショナー。トリートメント。ボディジェル。
大きなボトルが4本。彼と私の洗顔。2本。全て合わせて6本。
鏡。体を見る。浮き出る骨。歯ブラシが2本。タオル。身体を拭く。
青い体重計。上に乗る。最近徐々に体重が減って来ている。


下着を付けずにジーンズを履く。
リビング。カットソーを拾い上げる。
「オムライス食べるだろ?」
キッチン。シャツを着た彼の背中。器用にフライパンを振る。
2つの卵で一人前、4つの卵で2人前。


ワイングラス。赤ワイン。
「ジュブレ・シャンベルタンの2002年物だよ」


先が4つに割れたホーク。青い柄のスプーン。
オムライス。サラダ(レタス、トマト、クルトン、スライスしたニンジン)コンソメスープ。
サウザンアイランドドレッシングをかける。
《オムライス》
《サラダ/クルトン
「テレビを消そうか」
《サラダ/トマト》
フェリーニ8 1/2は題名の不完璧性についてもっと語られるべきだ
 彼の自意識と作品数、それは認めるけどね」
《サラダ/ニンジン》
《サラダ/トマト》
《オムライス》
「一昨日のステージで君が弾いたウェーバーの舞踏への勧誘は素晴らしかったね。
 ワルツは4分の三拍子。でもそれが偶数小節なら……
 例えば16小節ならそれまでの小節の合計で48の4分音符が存在するんだよ」
《オムライス》
《スープ》
《サラダ/レタス》
《スープ》
ムンクの一連の作品……そう、生命のフリーズ。22作品全て素晴らしいよね」
《サラダ/レタス》
《サラダ/トマト》
《サラダ/ニンジン、クルトン
《オムライス》
食べきったサラダ。残したスープ、オムライス。
「気にしないで」


「映画でもみようか?12モンキーズ のBDを買ったんだけど」
ブラット・ピット。彼の好きな俳優。
赤いレザージャケット。以前タイラー・ダーデンのマネをしてを着ていた。
……明日は朝早い電車に乗らなくてはならない。
「そっか」


玄関。革靴が一足、スニーカーが2足。ミュールが一足。合計4足
赤いステンレスのキーボックス。鍵は4本。
靴入れの上にガラスの花瓶。白いトルコキキョウが6本。


靴を履く。
私はまた来る事を彼に言う。
「気をつけて。家に着いたら連絡して」


玄関。木製のドア。締められる。
鍵が閉まる音。
彼が靴入れの扉を開ける音。
きっと自分の革靴を取り出して三和土に並べている。
ため息。
不安。





《ワルツ1 回想 メリーゴーランド/Recollection Merry-go-roundl》(2:17〜2:45)
《或るいは —スペクターとキツセ/Spector and Kitsuse 》


完璧と完璧な抑制と抑制された完璧はただの言葉遊びではない程に違いある


完璧は完璧か 完璧は円を意味し欠けの無い存在だ
そこに含まれない創造性
窒息寸前の完璧を誇る芸術 建築 数式
構造主義の範囲規定された中での相互作用と呼ばれる完璧さ
現れている顕在的な構造だけではなく、推測される潜在的な構造までに及ぶ観測
関係(構造)を賞賛する動き 繋がり=円=完璧
ポスト構造主義のコンテクスト(背景)の否定
創造物のみに全てを求める視点 完璧を求める視点


ただの言葉遊びではない程に違いがある抑制された完璧
歪む円または乱れた曲線
最大限発揮される想像性
構築主義の想像と結局は規定/分析不可能な構築の証明
主観による限界 個人の限界
テキスト/分析対象の恣意的または意図的な選抜=オントロジカル・ゲリマンダリング
作品や形式からの不完全な抽象 恣意的な抽象=歪む円=完璧な抑制を伴う抑制された完璧
構築と云う形に答えの前提を置きながらも自己を脱出出来ない思考ゆえの他者からの想像性





《ワルツ2 引力(魅力)/Gravitation(Charm)》(2:45〜3:33)
《或るいは —如何にして株の取引をするか/How to Trade in Stocks》


Jun-11-Wed 蒸暑い日
So What/Miles Davis


あまりにも嫌気がさしたので、打開策を探る。完璧性を得る事はとても出来そうにない
ので、なにか真似事をしようと思い立つ。クールの情景。大人性。墜落。未知。気取り
。緊張。呼吸。安心。


駅前のビルの二階にバーがある。青いネオン管。黒いガラス。店内は見えない。そこに
打開があると感じた。コーデュロイの黒いジャケットとパンツ。白シャツ。茶色いベル
ト。茶色い革靴。ドアを開ける。緊張。丸テーブルが3つ。カウンターには椅子が12
脚ほど。全体的に照明で青い。大きな電子ダーツ居体が二台。「どうぞお好きな席に」
眼鏡を掛けたバーテンダーが言う。髪は真ん中で分け耳の上で綺麗に揃えられている。
年は40才前後だろうか。ドアに近いカウンター席に座る。俺以外に客は居ない。まだ
夜が浅い時間。


この手の店が初めてな事を告げる。リクエスト。なにかカクテルを作ってもらう。シェ
ーカー。ウォッカ。ライムジュース。コアントローカミカゼです」どうせなら格好の
良い名前のカクテルが飲みたかった。ライムの香り。氷で冷やされたアルコール。こん
な蒸暑い日にはちょうど良いかもしれない。覚えておこう。2杯目はワイルドターキー
ソーダ割り。カットライム付き。カクテルについては全くの素人だが、バーボンには
多少の好みがあった。客が徐々に入って来る。常連が多いのだろうか?楽しかった。ま
た来ます。そういって店を出た。



Jun-17-Tue 相変わらず蒸暑い日
Satin Doll/Duke Ellington


二回目。また同じ席。シャンパン色のスーツ。この前と同じバーテンダー。彼が店長ら
しい。客が数人。この前に見た顔だ。一杯目。カミカゼ。二杯目。リクエスト。暑い日
に似合うカクテル。シェーカー。ラム。ライムジュース。ガムシロップ。「ダイキリ
す」カミカゼより癖があるがこれも美味い。カミカゼより名前が好きだ。こちらを毎回
頼もうか?三杯目。リクエスト。飲み心地が良いもの。シェーカー。ブランデー。トリ
プルセック。レモンジュース。「サイドカーです」確かに飲み易い。これも良いアルコ
ールだ。



Jun-23-Mon 暑い日
I've Grown Accustomed To Her Face/Wes Montgomer


女性のバーテンダーがいる事に驚く。バイク運転中の事故で負った足の骨折で一ヶ月程
入院してその後休暇を取っていたらしい。年齢は20代中後半。背が高い。長い髪を後ろ
で纏めて垂らしている。白いシャツ。黒いベスト。真後ろにふくらはぎの上辺りまでス
リットが入った黒いロングスカート。黒いヒール。制服に関するフェティシズムを初め
て経験した場所を上げるとしたらここになるだろうか。それに美しい人だと思った。


襟がとても小さい白いウイングカラーシャツ。それとベストやスカートの黒とのモノク
ロ。ベストにより強調させる胸。シェイプされた事により際立つコルセットを思わすく
びれ。タイトスカートのヒップと脚のライン。スリットとタイツと脹脛。なによりその
職業に求められる身のこなしと話し方。あまりにも判り易く原初性と文化性をもったフ
ェティシズムに頭がクラクラした。



Jun-30-Mon 雨
Are You Real?/ Art Blakey & The Jazz Messengers


いつもの席には先客。今日は空調が良く利いている。カウンター中央の席へ。店長に例
の彼女。今日は大分太ったオーナーもいる。「オーナーの作ったチキンカレーライスは
絶品なんですよ」ビールやウイスキーに良く合うらしい。彼女と話しをする。趣味につ
いて少し訊いた。俺の事を少し話した。ゴールドラムとホワイトラムの違いを教わった
。それを少し試飲させてもらった。「オーナーには内緒ですよ」



Jul-4-Fri 暑い日
My Funny Valentine//Chet Baker


ブッカーズは美味しくて好きなんですけど、私ワンショットで酔っちゃうんですよ」
ノブクリークのストレートを飲み干す。次は何にしよう。今日は何時もより財布が厚い
ジャックダニエルではなくて、ジェントルマンジャックを頼む。「ジャックダニエル
好きにはこれを」シャツの胸ポケットに刺さっていたペンを抜き、俺に渡す。ジャック
ダニエルのロゴが入ったペンだ、ノベルティという奴だろうか。「私の使いかけですけ
ど」彼女が笑う。



Oct-5-San 過ごし易い日
You Go to My Head//Art Pepper Quartet


彼女とオリジナルのカクテルを作る遊びをした。数回の試作後出来上がったカクテル。ホ
ワイトラムベース。ミント系のリキュール。クリーム系のリキュール。グレープフルーツ
ジュース。クラッシュドアイス。オールド・ファッションド・グラス。名前を付けた。サ
テンドール。デュークエリントン作曲のジャズの名曲。高貴な貴女や、それとは遠くも近
い(性的な意味での)いけているあの娘の意味を持つ言葉だが、恥ずかしくて一度しか名
前で呼んだ事は無い。今では"いつもの”で出て来るがあまりにもベタ過ぎて初めてそう言
った時に二人して爆笑した。明後日一緒に他のバーに行く約束をした。彼女の「勉強」と
云う理由で、俺の「前から行ってみたいと思っていた」と云う理由で。


少しずつの関係が面白かった。この先、欲望が具現化して、さらに先に別れが在っても、
なにも忘れる事はないだろう。嫌な出来事は嫌な出来事のまま良い記憶になるだろう。





《ワルツ3 かっこう(女性)/cuckoo(Female)》(3:33〜4:14)
《或るいは —ジョルジュ・キュヴィエ/Georges・Cuvier》


○機能的形態学/比較解剖学
有機的な集合 変化
全体の、ある一部分は機能を形成する為にある
それぞれの一部分は、集合が全体として機能出来るよう交互に関連/補足し統合的に成り立つ
逆を辿れば一部分から全体が把握/創造または推定が行える
全体としての機能(=目的)の為にある一部分の個々のさらに内部のより小さな機能
その為のある一部分の形体がある
形式を形成する為の個々の部分
その部分もまた形式を持ちまたそれを形成する為に小さな個々の部分がある


前者の全体を覆う形式(=目的)を強形式と呼び
後者の形式(部分であり形式でもある)を弱形式と呼んだ際
常に弱形式は強形式に覆われている訳だが、どちらの方が変化が可能だろうか?
強形式こそ目的でありその為の弱形式である事は繰り返し述べるが
それは弱形式がなくては強形式を保てない事を表してもいる
強形式を変化させるには弱形式を変化させなければならなく
弱形式を変更すれば強形式が別の形式になるか形式が崩壊する事になる



○純形態学/比較解剖学(相同 相似)
ある形式と別の形式を
またはある形式の一部分と別の形式の一部分が同じ物だと認識した場合
その"同一性"はどの様な物か
2つの似ている形式(または一部分)がある元となる形式(これを原型式と呼ぶ)を
共通として持っていた場合
注目するべきはなにが同じかより、何が違うか、何故違うかだ
そこに強形式と弱形式の変化とその相互作用を探る事ができる


2つの形式がそれぞれ異なる原形式を持ちながら
形式自体やそれを構成する一部分が似ていると認識した場合
注目するのはなにが違うかより、なぜ同じになったかだ
形式は=機能=目的でありその為の個々の一部分であるが
原形式が違う=目的が違う、のにも関わらずなぜ同一と認識出来る様に構成されたのか
部分は機能(目的)の為でありそれが同一である事は機能が同じ事を証明する
一部分が同一の場合より、形式が同一であると認識出来る場合その問題はより表面化する



○比較発生学
それは形式の発生経過により仮定出来る
前者は目的(形式)の変化であり、後者は目的の同一化だ
前者の目的の変化は形式が置かれた時代と文化(地域または経済的な格差)の違いでなどで
後者の目的の同一化はそれらの共通性/親和性で理解が出来る
ある原形式がそれぞれ別の時代/文化に置かれた場合
ある別々の原形式が同じ時代/文化に置かれた場合
形式が存在(=生存、生残る)する為
前者は別の形式に、後者は同じ形式になる事を要求される
要求に応じる事が出来なければその形式は時代や文化から破棄される
またすでに時代や文化が要求した形式が存在する場合
ある形式は破棄されるか同じ物と看做され吸収される
この段階に来てその要求を需要と呼ぶ事も可能になる



○実験発生学
ある形式がある時代やある文化(地域または経済的な格差)に
存在した原形式と比べ変化している場合
形式の変化の前には必ず時代や文化の変化が在る
強形式と弱形式の変化の可能性とその優位競争に関してはここで決着が付けられる
変化の要請は常に時代と文化によって行われる
これは強形式への要請であり一部分の変化でも形式全体(=強形式)が変化した事になる
ある一部分に内包される極少しの部分が変化した場合であっても
一部分の機能とは別の一部分と常に集合が全体として機能出来るよう交互に
関連/補足し統合的に成り立っている
その為一部分の変化は全体に影響を及ぼし強形式すらも変化させる
これは弱形式への変化の結果ではなく、強形式への変化の要請から弱形式が変った結果だ



構造主義生物学/ブライアン・グドウィン
繰り返しになるが形式の変化は常にそれに先んじて時代や文化の変化が在る
それらの要求によってはじめて形式は変化が可能になる(形式単独では変化の機能を持たない)
もしある形式を意図的に変化させるならば、その形式が置かれる時代や文化を変えれば良い
また時代や文化からの需要が明白である場合(一般的に明白である事はほぼ無いが)
ある別の時代や文化に存在する需要に近い形式を移動させ変化させる事も効果的だ
ある形式が置かれる、時代や文化と云う場こそがその形を決定する
それはその形式が持つ発展過程(=変化過程)の経歴や原形式が持つ形式より優先される
場により要請されれば、発展過程や原形式にまったく含まれない物でも変化として要請される
変化は原形式の枝や根が伸びる様な物ではない





《ワルツ4 野うさぎ(男性)/Jackrabbit(Male)》(4:14〜5:02)
《或るいは —壁の中に消える女たち/Women who disappear in wall》


横浜。ある男がいて。
私は彼に期待をして、それを言い訳にして、田舎から出て来た。
彼女に振られたと聞いて、良い機会だと慰める事と
家具を購入する時のアドバイスをお願いして一緒に街を歩いた。
横浜駅周辺の繁華街で買い物をする。赤レンガで食事をする。港を歩く。公園で手を繋ぐ。
丘の上、向こうに見える倉庫街のクレーンがキリンに見える。
学生の頃の同級生。久しぶりにあってまだ二回目だけどキスは許した。
家に上がる事も許した。
でも家に入って私の体だけを彼女の代わりに求められてあまりにも失望した。
私の心を知っているくせに、薬局にもよれずにコンドームも買えなかったのに。
もう二度と合いたくない。死ねば良いのに。


そんな内容の書かれたメールを6通にも渡ってもらった俺は
自分のあまりの情けなさに死のうとする。
唯一持っているセミオーダーのスーツを淡い青いシャツと合わせて着る。
白い革張りのソファーに腰掛けて、
オーディオにはセロニアス・モンクのセロニアス・ヒムセルフをセットする。
(始めはチャイコフスキーの悲愴を掛けようと思ったが、CDが見つからなかった)
コリンズグラスウォッカを注ぎライムを絞ってガムシロップを垂らし
複数の錠剤を入れて飲み干す。
ソファにうなだれ天井を見上げ眼を瞑る。流れるラウンド・アバウト・ミッドナイト。
昨日のあの娘を思い出す。別れたあの娘を思い出す。
一週間前口説くのを躊躇い結局はやめたあの娘の事を思い出す。
どうせならアプローチしておけばよかった。
この気に及んでそんな事を考えている自分に嫌気がさす。
情けない。情けない。情けない。情けない。


数十分後。あまりにも激しい吐き気に襲われてトイレに向かう。
便器の中に顔を突っ伏して嘔吐する。胃の内容物が喉に詰まる。
昨日あの娘と食べたサンドイッチの肉かパン屑か何かだ。
息が出来ない。喉で叫ぶ。
そのまま窒息して、
便器に顔を埋めて吐瀉物に塗れて酷い臭いをまき散らしてあの娘の事を忘れきって死んだ。






《ワルツ5 感傷的な安心/Sentimental Safety》(5:02〜5;54)
《或るいは —毒を盛られた17人のイギリス人/17 British people were poisoned》


毒は常に服装に存在するのか


現代の礼服であるタキシードの一様性 厳格性
服装の没個性故の立ち振る舞いでの個性化
服装の様式を守る事で始めて内面が有効に機能する場での服装
タキシードから発生するテーラードジャケットの着こなしあるいは着崩しとしての礼服


時代の先端的、それも最先端な精神の服装での具現化
パリプレタポルテコレクションに代表されるハイファッション
ハイファッションは常に望郷からの懐古を繰り返しながらハイアートと隣接しようとする
1つの理想と複数の拒絶の上に完成される世界=コレクション 完璧と妥協の無さ
繰り返し語られる服装としての現実性と非現実性あるいは実用性と非実用性
そこから放流そして補給されるデザイン
数年後には安売りスーパーの衣料品にまで普及される洋服への思想


あらゆるしかしそれは大半において既に存在しており
手に入れられる範囲での洋服での着こなし、節操のなさと格式の低さ
時代と国と時には文化や所属を表すユニフォーミティな服装まで跨ぐ異質を繋ぎ合わせる
混沌さえ産み、既製服を指しながらも常に現実性と非現実性
あるいは実用性と非実用性が語れるストリートファッション


服装とこれらの区分け、それぞれの規定を召還するのはなにか
時代や文化に服装が召還されるのか、服装が時代や文化を創るのか


如何にして毒は服装に忍び込むのか、その毒はどこからやってくるのか
現在の今この時間までにどれだけの人間が服に混入した毒で殺されて来たか
洋服がどれほどまでに毒によって制圧/制御されてきたか



1.どれだけの人間が貴方の服装を影に日向に笑って来たか
2.アレキサンダー・マックイーンを殺したのは何か
3.エディ・スリマンを細さと長さの中毒症にしたのは何か
4.何がオランダを憧憬する薬物依存/渇望/憧憬者の様に服装従事者にパリを憧憬させるか
5.買い物依存者が衣服に依存するのはなぜか
6.フランス人のココ・シャネルがなぜドイツに対外協力したか
7.如何にして第二次大戦中でもパリコレクション(ディナー付きで)が開かれたか
8.戦後実用的な洋服が盛況を極める中
 クリスチャン・ディオールのニュールックが絶賛されたのはなぜか
9.軍の作業着さらに進んで戦闘用の服をハイファッションに取り込んだ末路
10.トム・フォードが映画業に進出したのはまた成功したのはなぜか
11.現代のトム・ブラウンがスーツにこだわるのはなぜか
12.イヴ・サン=ローランを継ぐ者が現れなかったのはなぜか
13.オートクチュールの顧客がどれだけ少ないかまた少ないのになぜ維持されているか
14.娼婦風ファッションとジーンズがハイファッションに取り入れられた経緯
15.コレクションにはあるいはアパレルのCMにはあるいは販売店には音楽がなぜ必要なのか
16.エディ・スリマン引退後クリス・ヴァン・アッシュはなぜクラシカルな服装に舵を切ったのか
  またなぜランウェイではなく展示会だったのか
17.服装への欲望は常に=毒なのか






《ワルツ6 無題/Untitled》(5;54〜9:22)
《或るいは —教養の再放送/Repeat of education》


文体の規定に依るストーリーの進行と
語彙にストーリーは依存するのか


 大雨が降ったら真っ先に水が流れ込みそうな角度の階段を下りた先にあるバー
 《Vollstaendige Unterdrueckung der smart》(完璧な抑制)
 大理石の床 カーボンファイバーのスツール 黒樫のカウンター
 エアステス・ゲヴェックス 独特の酸味が利いた完璧なドイツワイン
 鹿肉と洋なしのカシスソース掛け
 酸味と獣の匂い


  「……例えば60年から70年代前半までに産まれたジェネレーションX世代の小説家
   チャック・パラニュークブレット・イーストン・エリス
   彼らは器用に世界に唾を吐きかける ……たとえば
    「どうぞご使用下さい
     私達シャネルはパリプレタポルテコレクションでの意志表明により
     フェイクファーを使ったエコデザインで
     私達の顧客の毛皮にペンキを掛ける職業の人々を失業に追い込み
     ランウェイで流れる歌唱付きの音楽で 男達をベイビーと
     呼び自らの力で手に入れる女性を力づけます
     第二次大戦中 故国がナチスに征服される中
     洋服と自らの欲望(または恋)の為にナチスドイツ将校の愛人になった
     ココ・シャネルというフランス人の帽子デザイナーでさえ私達は応援しています
     全ては素晴らしい低賃金の中国人女性の手により完成されるのです」」


文体が形式に先んじて主導を握る事はあるのか
形式との対当はそもそもできるのか
形式が存在しないテキストにこそ文体が浮き出てるのか

 
  「この世代の特徴は企業やブランド、コマーシャルに対する媚びと行っていい程の引用と
   そこから繰り広げられる社会的絶望だ そこには批判すらない
   現代への批判にヒエロニムス・ボッシュの絵画を使用するより
   マリネッティのフトゥリズム(未来派)を褒めて皮肉を繰り広げるやり方だ


   だから勿論フトゥリズムを数週回って信用せず
   バロウズは最早体たらくで幸せ者
   プルーストにもジェイムズ・ジョイスつまりユリシーズの傾向も完璧には継がなかった
   エルロイはいつまでもダークサイドオブアメリカで彼らにはクリティカルすぎたんだね
   彼らがモンドリアン( 赤・黄・青・黒のコンポジションの彼だ)の
   都市抽象画をどう思うか訊いてみたいんだ」


 壁の掛けられているマレーヴィッチのシュプレマティスムの黒い作品が数枚
 数百枚のセピア色のポートレート 白人黒人黄色
 アジアヨーロッパ南北アメリカ……あらゆる人種の顔
 ここにゴーギャンのクロワゾニスムがあったら笑う所だ


  「ある物事をなにを基準にして語るか、表現するかというのは何よりも重要だ
   彼らの世代はそれを持たない
   ある種の文化つまりブランドや企業とそこからの批判に立脚している様に見えて
   一切の基準を持っていない
   基準を持たない事は空しさや自己の内面の空虚さに接近する
   それはある一時代のニヒリズムに似ているが
   彼らは外面に一切の解決を持たない方向性だ
     「北欧製の家具IKEAIKEAIKEA(イケアイケアイケア)
      高層マンション、システムキッチン、業務用冷蔵庫
      いつでも各種パテとスペインのカヴァが冷やされている
      揃えられた白い皿、磨かれたナイフとフォークとスプーン。
      バカラもどきの(そしてもっとモダンデザインな)ワイングラス
      アンティークのティーポッドと青いリチャード・ジノリのカップ
      パイルの長い白いカーペット
      Boseの再生機、AKGのオープンエアー型のヘッドフォン


      この部屋に来た事が在る他人は売春婦だけだ」



文体は常に形式に覆われている
文体の変化と形式の変化はどちらが先に行われるのか
またどちらが優位性を持つのか


 ヒステリックにも感じる光を放つ小さなガラスのシャンデリア 赤黒青
 運ばれるブルーベリー入り生チョコレート
 マクレランズ スペイサイドのウイスキー


  「美術の普遍をルイ・ベルトランの夜のガスパールは見つけられないものだと暴露した
   散文詩と云う形式の無い形式を作ったベルトランの作品と
   彼らの作品は同じ方向性に走っている
   不可能性と文体によって作られる幻想性だ
   これも見つからない、探すのが不可能な物を主題とする事から
   ニヒリズム的ではあるけれど
   もっと内面、あるいは内面の神、あるいは内命の神の不在に向かっている
   神の不在に立脚するニヒリズムとは違い
   それゆえの悩みと不安に対当する、あるいは出来ない事に主題が置かれている
     「俺達は父親から見捨てられた、俺達は上の世代から見捨てられた
      俺達は俺達を見捨てた、俺達は……ところでお前は誰なんだ」

 
ストーリーの為に必要な文体なのか
文体が導きだしたストーリーなのか
個と個を含む全体の関係性
あるいは豚肉のソテー玉ねぎとイチジクのソフリット
あるいはエルメスのコレクションとブランド起源(馬具工房)とコレクションの最初に鳴らされる馬の嘶きの関係性


  「アンディ・ウォーホルを経過し村上隆へと繋がるポップアート
   あるいはオップアートの流れの源流がイギリスにある事は明白だろう
   現代の消費性、関連する大量生産、画一性、大企業、安価、一過性
   それを全面に表す思想、コラージュ、イメージの引用、作品の複製
   サブプライムローンの直撃、パリコレクションのラグジュアリー
   (あるいはリュクス)からの反転
   オートクチュールの衰退、既製服の正当性とストリートの着崩しに現在ある孤独性
   ユニクロの栄華
   鉄の女ジル・サンダーとのデザインの提携により俺達はより現在の経済状態に規定され
   逸脱を許されずに釘で縫い付けられた、そこからの脱出方法は何か
   身体を鍛えるのか 自己破壊か 社会弾圧か
   インターネットへのより深い孤独化を伴う逃避か
     「床は常にワックスで磨き上げられている
      輝くボトルの陳列棚 オーナー自慢のワインセラー
      オレンジソースが掛けられたオレガノ入りバケット


 始まりリチャード・ハミルトンが56年の"これが明日だ"展で展示した
 一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか、だろう
 この作品で床に置かれるオーディオ機器
 POPと書かれたキャンディの包装で作られたテニスラケット
 マッチョなしかし内面は決してマッシブではない男性の裸


俺達を出来る限りに正しい仕方で承認してくれ
ある出来事をそのままに振り返らせてくれ
このカメラは高品質なレンズにより高画質な写真を約束し
ユーザーフレンドリーなプログラムにより使い易さを最優先したソフトウェアーが搭載され
キノコとバナナのフリッター シナモン掛け、チェイサー
コンパクトなデザインにより持ち運びのストレスを軽減しています
そのまま振り返えさせてくれ
ところで……俺に想い出はあるのか


  「角に置かれた観葉植物は可愛らしい白い花を数個咲かせている
   グランドピアノの椅子に女性が座る、痩せた身体、疲れた目
   奏でられるウェーバーの舞踏への勧誘」
     「文体に固執されたストーリーは
      文体によって作られた物と言って良いのか
      その固執はどこからやってくるものか
      作者の精神によって召還されたのか
      ストーリーによって要求された物かのか
      ストーリーが作者によって召還されたものならば
      文体とストーリーではどちらがより上位に立つのか
      それは絵画の様に分離不可能なものなのか」


ポップアートと彼らの世代の小説の思想は相似している
繰り返しになるが消費と生産、そして複製、大企業への信奉者と皮肉
では彼らの文体とポップアートの表現は相似しているのか
芸術、特に平面につまりキャンバスに描かれた作品は形式=描かれ方
のそれは筆使いにまで還元化しても良いが、そういった傾向が小説に比べてより強く表れる
今語られているストーリーの形式=文体の可能性が絵画では当たり前に肯定されている 
印象派の技法で描いたルネッサンスの絵画はルネッサンではないし
スーパーリアリズムはまさしく描かれ方=形式という方式が成り立っている


 「トイレ 白い壁紙 青を基調とした物で纏めらている小物 使い捨てのタオル
  油取り紙 紙コップ 洗口液」


 またジャコメッティの彫刻と考えへの親和性がある
 彼の極限までに薄い人物像はそれが置かれる場から孤立している
 対当しているといってもいいがそこには対当する故の孤独で覆われている
 その人物像は、我々が否が応にも社会に存在し、如何に弱くもろい物かを私達に思い知らせる
 キルケゴール経由のサルトル実存主義の思想を表すが
 ジェネレーションXの表現者達とジャコメッティの作品には
 より孤独に、つまり神との対等も社会参加もできない
 或るいは社会に参加出来ても、結局はそこに一個人
 自分自身として存在出来る事が無いという諦めに収束していく
 それらはシュールレアリスムと、主観性と現実をどんな形であれ
 形の違いはあれ捉えようとしている所で共通点が在る
 しかし実存主義シュールレアリスムと違いどんな結果であれ
 自己の現実に無限の責任を負う事を重視している
 彼らの作品においてはそれがより悲劇的な物として物語や彫刻に現れている。


  「Givenchyジバンシィ)のボディ エクセレンス ハンドクリームを塗り
   Hugo Bossヒューゴボス)のダークブルーをウエストと肘裏に1振りずつ
   目元にはLancome(ランコム) のリバイタライジング アイリリーフ
   Yves Saint laurentイヴ・サン・ローラン) のコントア エクスペール インテンシヴ
   リフティング セラムで首筋/顎を引き締め
   Cliniqueクリニーク)のオイル コントロール ハイドレーター で"油"を殺す
   アイツは週に三回も顔を合わすのに俺の顔を覚えていない、一年経ってもだ
   ところでお前の名前はなんだったか」
     「ではストーリーもそうなのか 使用される文体によって形式は変化するだろうか
      形式と個つまり文体と
      全体の関連性により文体が僅かでも違う物になれば形式にまでその変化が及ぶのか
      ジェネレーションXの作家も絵画の様に描かれ方=形式という方式が成り立つのか
      ラテンアメリカ文学マジックリアリズムはある種の倒錯や幻覚ともとられるが
      バロウズによって展開されるビート文学の
      ドラッグや麻薬と覚せい剤の関連とは大いに異なる
      何処からか吹き出る空気 完璧な空調
      一部ある木製の壁は様々な木の破片が
      様々なニスによってモノクロに色が別れパズルの様に合わせられている
      それはブルトンによって宣言されダリによって世界に広められた
      シュールレアリスムとの一致性がみられる
      多くの批評家がマジックリアリズムの非合理性や神話との関わりから
      フロイト的無意識の否定、つまりシュールレアリスムとの関連も否定されているが
      イエロローズオブテキサスの12年 ストレート、2ショット
      シュールレアリスム的無意識の中にどれだけ神話が挿入されているか
      如何に無意識が非合理的であるか
      あるいはシュールレアリスムの作家がそう捉えたか
      アイツの名前はビザ、あの人はマスター、彼はアメリカン・エキスプレス
      あそこにいるのはダイナー、名前なんてそんなもんさ
      おっと本名なんか教えないでくれよJCB
      これらによりシュールレアリスムマジックリアリズムとの一致性は否定出来ない
      例えフロイト的無意識が科学的合理性の視点に立って発見されたものでもだ
      なにより忘れてはならないのがスペインと南米という共通点だ、その歴史だよ
      フォークの柄に刻まれたアザミの紋章 白い食器
      林檎入りのスモークチーズ 
      鳥の薫製が添えられストロベリーソースがかけられたアイスクリーム
      ラテンアメリカ文学においてはなにより文体が優先されるんだ
      マジックリアリズムの魔術はストーリーよりも文体によって掛けられ
      それがストーリーになる つまりに描かれ方=形式という方式が成り立つ
      文体はなにをもって文体とされるのか 文体はまた言語に依存するのか
      文体がストーリーに影響を持てるとしたら
      また文体がストーリーに召還された物なら
      俺を批判してくれ 出来る限り間違ったやり方で否定してくれ
      俺達はネットのやり取りで 掲示版で コミュニティで 自意識を傷つける 虐め抜く
      頼むから認識した振りをさせてくれ 間違った振りをさせ続けてくれ
      なにかをする振りをさせ続けてくれ
      俺はそうじゃないと言い切るあいつにそう思い続けさせてくれ
      それらに言語が及ぼす影響はなにか 言語は歴史と文化に依存する 
      ならば常にストーリーは歴史と文化により要請されるのか
      苦みの強い褐色の中国茶エスプレッソとトマトのドライフルーツ
      ピアノの演奏が終る 拍手が鳴る スピーカーからバロック音楽が流れる
      ここで彼らの世代の作品における魔術性が浮き出て来る   
      彼らの皮肉と基準を持たない事での空しさや
      自己の内面の空虚さに接近する仕方は魔術的に書かれる
      ここに来て遂に彼らの文体とストーリーの上位と下位を語れる段階になるのだが
      ところで……」


ところでお前はなにを読んでいるんだ





《ワルツ7(ワルツ2の繰り返し) 引力(魅力)/Gravitation(Charm) 》(9:23〜10:07)
《或るいは —無限の想像力の先に在るのは沈黙/Silence beyond imagination》


チョコレート。ソーダニトログリセリン
カップ。チェーサーにレモン垂らしロンドンジンに涎垂らす。
ソファー。暗い壁。向かいの窓。光遮るカーテンに冴えぎる世界。
無くしていく浅い過去。三毛猫。占い。堅いパン。バスタブに叩き付ける。
ジーンズ。Tシャツ。裏返しの靴下。薄いジャケット。淡色のブーツ。
ざらし。屋根の無い物置。後ろ向いたら黒猫横切る。
トライアンフ。エンジン。真夜中。2つある道の中、1つを走り抜ける。


気分が良いのが精神衛生上良い。気分が悪いのが精神衛生上悪い。
気分が良いのが良い、気分が悪いのが悪い。精神衛生上一番悪いやり方。
赤ん坊。万能感。


複雑に彩る世界に光を当てて下さい。
ある1つかその仲間か補色や対抗的な色を含む纏まりのみ反射をする光を。


トランプ。コーラ。ジルコニアの指輪。
トパーズ。サファイア。赤い絨毯。
トースト。目玉焼き。汚れた木箱テーブルにして。
朝焼け。コーヒー。砂糖二杯。窓の結露拭いた布切れ。
ベット。ストライプのカヴァー。天井を見ると染みが見える。
モノクロの夢。今日の夢。悪夢見つけて吐き気で起きる。
疲労感。脱力。太陽。2つある道の中、1つを走り抜ける。


気分が良いのが精神衛生上良い。気分が悪いのが精神衛生上悪い。
気分が良いのが良い、気分が悪いのが悪い。精神衛生上一番悪いやり方。
赤ん坊。万能感。


複雑に彩る世界に光を当てて下さい。
ある1つかその仲間か補色や対抗的な色を含む纏まりのみ反射をする光を。


本当は知っているけど。本当は知っているけど。


白シャツ。側章パンツ。テーラードジャケット
革靴。グラス。海水。脱水症状。
砂浜。絡まったイヤホン。ブラウニングとシェリーの詩集。
革ベルトの時計。打ち上げられた深海魚の死骸。
二日酔い。這いつくばる。リヴァイアサンの引用。
ぼやけた視界。飲み干すモヒート。崩れた帽子。
汗。空虚。夕暮れ。2つある道の中、1つを走り抜ける。


気分が良いのが精神衛生上良い。気分が悪いのが精神衛生上悪い。
気分が良いのが良い、気分が悪いのが悪い。精神衛生上一番悪いやり方。
赤ん坊。万能感。


混乱。保養地。ハーレム願望。
閉塞感。酔いどれは日常にあるカーニバルに今を忘れる。
白い帽子。白いスーツ。サーモントタイプの眼鏡。
見つからない解決。邪魔者。彼の自殺。全ては幻覚。
狂女。ダリ。カダケス。海岸。フェリーニ
目眩。覚えのない電話。倒れ込んで現実で起床。
混乱は君。混乱は自分自身。真夜中。2つある道の中、1つを走り抜ける。


気分が良いのが精神衛生上良い。気分が悪いのが精神衛生上悪い。
気分が良いのが良い、気分が悪いのが悪い。精神衛生上一番悪いやり方。
赤ん坊。万能感。


複雑に彩る世界に光を当てて下さい。
ある1つかその仲間か補色や対抗的な色を含む纏まりのみ反射をする光を。





《ワルツ8 指す光(序奏コーダ)/Indicated Light(Intro coda) 》(10:07〜10:56)
《或るいは —ゲオルク・ジンメル/Georg Simmel》


○形式=思想
形式は何を表すのか。形式は常に様々な文化を包括する時代によって召喚される。
新しい形式(技術と言い換えてもいいかもしれない)の出現により時代が変化することがあるが、
その前提には時代による変化の要請が存在する。新しい形式より変化した形式といった方が正しい。
時代による変化の要請は時代を変化させる思想によって要請される。
思想は時代を作り、個々の形式は個々の思想を表現している。


○思想=相互作用=個人
思想は個々の物ごとや個人同士での相互作用によって生み出される。
それは集合としての思想だけではなく、還元して個人個人の思想や、
個人による物ごとの解釈にまで及ぶ。
思想は個人の集合であり、一旦集合した思想は個々の思想にも影響を与える。


○形式=時代=思想=相互作用=個人=形式=時代=新たな形式
(あるいはホモトープ、あるいは≒、あるいは≦ 、あるいは ≧)
形式は時代により作られ、時代とは個人間の相互作用による思想により作られる。
しかし個人間の相互作用と思想は形式によって規定される。
そして規定された人々の相互作用する思想で新たな時代が作られ、
それにより新たな形式が作られる。





【Afterword/終わりに】


この楽曲の発展過程(クリックで別ページに動画が開きます)

主題作成(ギター)

String Quartet No.1 2nd Movement Motiv only

ギターで作ったモチーフ(主題)をヴァイオリンとチェロへアレンジ

Guitar→Violin&Cello

ヴァイオリンとチェロへアレンジした物を、さらに弦楽四重奏
(第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、それにヴィオラとチェロ)にアレンジ

Violin&Cello→1st Violin&2nd VIolin&Viora&Cello

弦楽四重奏(第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリン、それにヴィオラとチェロ)を
そこからさらに発展

1st Violin&2nd VIolin&Viora&Cello→Ver.2




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