愛する物語

窒息した午後の部屋
狭い窓から覗く曇り空が部屋を満たす


本の壁
全てのページに諦めの物語が詰められている


彼はそこから一冊抜き取る、緩やかに崩れ落ちる本


仕舞われた夕暮れに息吹きをかける


忘れた過去に絡みつかれた
空のゴミ箱
捨てることを戸惑い続けた


物語は続いてしまった


連鎖する雪崩
書物が彼を飲み込んだ


本の海
全てのページに諦めの物語が詰められている
溺れる底には多くの死体が見えた


あれは誰だ?
俺か?君か?


自力で這い出た
カビ臭い空気を吸う


いま本棚は空だ
諦めは地面となり
男の足を支えている


踏み固めろ
踏み固めろ


全てのページに諦めの物語が詰められている


踏み固めろ











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