ずっと後ろで暮らしている/どこかに私は落ちている 3ページ目(不定期更新の短編小説)

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変な仕事というのは精神的な物ばかりではないんだ。
現実的な仕事でも不思議な結果になったものはあるよ。
依頼主は中国人。短く切った黒髪。
痩身というよりも、栄養が行き渡っていなくて痩せている体。
肌は褐色で、褐色なのは元からではなく
厳しい生活を営んできたからなのだろう。
彼は黒い瞳をを一直線に向けて、口を開く。
自分が不法移民である事を僕たちに伝えた。
料金は全て前払いで支払うという。
客が不法移民であっても仕事の内容が
僕たちが考える倫理の範疇を越えていなければあまり問題にはならない。
猫探しならば喜んで引き受ける。
問題は金と僕たちの身の安全が保証されているかだ。
前払いだから金は問題ない。
そして安全で簡単な仕事だと依頼人が言う。
安全と簡単を強調する仕事が
実際は簡単でもなく安全でもない事は多々ある。
一番多いのは簡単で安全ではない仕事。
次に多いのが安全で簡単な仕事。次が安全で難しい仕事。
一番少ないのは難しくて安全ではない仕事という訳。
とはいえ別に危険という事ではないんだ。
安全ではない事と、危険な事はまた別の事だからね。
さて今回はどうかな?
—不法入国ですか?
僕の疑問に、依頼主は真っすぐな目のままで答える。


病院、
病院にも色々な種類があります、
診療科の区分けがあり、
それぞれの専門分野があり専門医が居ますよね、
内科や外科や皮膚科などの事です、
診療科を束ねて設置している総合病院もあり、
総合病院でも成人専門の病院や小児病院があります、
精神科病院という存在もあります、
私は日本に渡るまで、中国の精神科病院に入院していました、
精神科病院が日本にもある事は知っていますよ、
日本では精神科病院の管轄はどこでしょうか?、
私が尋ねているのは精神科病院を管轄する行政機関の事です、
衛生部でしょうか社会保障部でしょうか?、
中国では精神科病院を管轄する機関は複数に跨がっています、
中には公安部が管理の権利を有する精神科病院があります、
安康医院と言うのです、
中国全土に40程の安康医院があります、
公安部とは中国の警察を担当する行政機関の事です、
公安部は一般的な犯罪者を逮捕する仕事以外にも、
政治犯の逮捕、矯正などの権利を持っています、
公安部の中には中国国内の政治的叛乱分子を監視する公安警察があります、
公安警察は治安を乱す恐れがあると判断した国民を、
裁判無しで捕まえる権限を持っています、
具体的な犯罪を行っていなくても逮捕できるのです、そして矯正を行います、
ここまで話せば、
中国では精神科病院がどの様な機能を持っているかはお判り頂けると思います、
安康医院には異常な振る舞いをした人間以外にも、
政治犯、政府の意向に反した陳情をした人間、
一人っ子政策に違反した人間が収容される場合もあるのです、
私は武漢市で民主化運動に参加していました、
武漢市は省に管轄される市でありながらも独立的な権利をもっています、
地理的、経済的に重要な場所なのです、
なので武漢で運動をする意味はありました、
私は著名な運動家ではありません、
しかし影響力のまったくない運動家でもありませんでした、
つまり中国政府からすれば格好の的だったのです、
中国政府による私の拘束は、
社会的な影響を与える程には話題になりませんでした、
しかし民主化運動、他の運動家には影響を与えました、
私の逮捕は武漢市における民主化運動の沈静化に役立った事でしょう、
安康医院に入院した最初の日の出来事をよく覚えています、
病院と言っても石で出来た砦の様な建物です、
言っても清潔さはなく、
ぬかるんだ地面、苔の生えた岩肌、据えた体臭の臭い、
汚れたシーツ、部屋には区切りも、自室も無い、
ある男が私の事を見ました、私も男の事を見ました、
気が付きました、
男は私と同じ様に安康医院に入院されられた運動家だったのです、
男が数年前に逮捕されていた事を思い出しました、
彼はぬかるんだ地面に虚ろに立っています、
首をおかしな方向に曲げていました、
彼が言いました、
ここに居るせいでおかしくなってしまった、
異常な場所にいると人は異常になるという事です、
私は彼を見て映画のゾンビを想像しました、
私は彼の様にはならないと誓いました、
ですが入院生活は厳しく孤独で厳しいものでした、
入院での生活は厳しく孤独でした、
入院生活は厳しかったのです、
生活の厳しさと孤独は万人の問題です、
数年の入院生活は孤独でした
厳しさと孤独です、孤独でしたね、
孤独、
知っていますか?、
立ったままする食事の不味さを、
食卓も肘を掛ける台もありません、
ぬかるんだ地面に棒立ち、
あるいは苔の生えた岩肌に寄りかかり食べのです、
すえた臭いの中で、何時釈放されるか分らない時間の中で、
数年の厳しい入院生活の後で私は退院しました、
私はもう役に立たなく成っていたのです、だから解放されたのでしょうね、
そしてもう中国には居られないと感じました、
何時如何なる時も彼らに私は監視されていたのです、
病院の外の社会に残されていた物はほとんどありませんでした、
家族も友人もどこに行ってしまったのでしょうか?、
眠る時、窓の外に揺れる影に怯える毎日でした、
病院を出ても尚、私は孤独でした、
いえ、より一層孤独でした、
外には希望があるはずだったのに、
外に出たら希望はありませんでした、
だから私は日本へと逃げる事にしました、
彼らの監視を逃れる為に、
日本には私と似た様な人間が多くいますから、
入院生活で唯一と言ってもいい良い事がありました、
それは伝手です、
私は妻とダンスホールで出会いました、
一生の友だと思っていた友人とは大学で出会いました、
ある場所に行かなくては出会えないに人々が居るという事ですね、
刑務所の場合は犯罪者です、
私は安康医院で得た伝手を辿って密入国の仲買人に会いました、
入院の前に隠していた金が役に立ちました、
真夜中、暗い港から古い漁船に乗り込みました、
舟底に作られた部屋に押し込まれて、
きっとあの部屋は元々は捕まえた魚を入れておく生け簀だったのだと思います、
そして日本へと向かったのです、
何日間掛かったのかは分かりません、
私以外にも多くの密航者がいました、
誰とも口を交わしませんでした、
密航は成功しました、
腐った塩の臭いがする密室からでました、
私が初めて見た日本は海です、
夜明け直前の海です、
船から抜け出して見た光景を私は忘れません、
闇が太陽に追い払われる直前、
波は荒く黒ずんでいる、
光は未だ差し込まない、
暗闇の海の向こう側に中国大陸は見えません、
ただ荒れた海があるだけです、
私は実感しました、
私にはもう所属する国など無いのだと、
日本は異国です、海に囲まれた大地です、
ここからは何処かに逃げる事はできません、
私に逃げる場所は残されていない事を実感したのです、
残っているのは私自身の肉体と精神のみです、
私はこの時になってやっと決意しました、
身1つ心1つを持って最後まで生き抜こうと、
ゾンビになるのは絶対に嫌でした、
国の意向も政治も関係ない、
私は所属する国家を失った、
国家権力や監禁、病院の決めつけにより、
私の身と心を支配しようとする試みが幾度と無く行われてきました、
家族も友も失い、財産も無い、殆ど全ての物を失ったんです、
ですが、真っ暗な先の無い海を観た時に自覚しました、
私こそが私自身の唯一の支配者なのだと、
私は私の人生と闘わなくてはならない、
後ろは海で、目の前には異国の空と大地が広がっている、
一敗地に塗れた私は乾いた砂浜を強く踏みしめました、
その時、鮮やかな潮風が私の鼻をくすぐったのを覚えています


彼は最後に繰り返した、
病院の外に有った物は殆ど失った。
けれど僅かに残されていた物もある。
彼曰くとても大切な物。
今は鍵付きのスーツケースの中に保管されている。
スーツケースが依頼と関係している。
つまり依頼とはスーツケースを1ヶ月間預かる事だったんだ。
中身は見ないで欲しいという注文付きでね。
自宅に保管するのもコインロッカーに預けるもの不安との事、
僕たちは協議の結果、依頼を受ける事した。
社長の強い押しがあったのが決定打となった。
まったく上司という物は意味が良くわからないね。
さて不思議な出来事は依頼を達成した後に起ったんだ。
1ヶ月後にスーツケースを彼に返還。
彼は直後、僕の目の前でスーツケースをゴミ捨て場に投げ入れたんだよ。
彼曰く、もう中身に価値は無くなったから。
爽快とも諦めと判断がつかない笑顔を浮かべていた事を覚えている。
当時の彼と1ヶ月前の彼とを比べると明らかに違う点があったんだ。
違う点とは彼の指が2本少なくなっていた事だね。
指の損失とケースの中身がどう関係するかは訊かなかった。
けれど、瞳には一応の生気が辿っていたから、
彼の中では問題は無いという事なのだろう。




極めつけのおかしな依頼はメキシコ人から持ち込まれた。
寺か教会にでも相談に行った方が良いのではないかという様な内容。
普通の人が聴いたら眉を潜めるであろう不思議な相談という訳。
メキシコ人の依頼人
白いあご髭、黒髪のオールバック。肌は褐色。黒いシャツ。
黒いスーツを着ている。
首から下げている太目の目立つネクタイ。
赤い。
事務所の外には高級な外国車が止まっている。
黒塗り、スモークガラス、ホイールは交換されている。
優秀なビジネスマンといった風貌。
彼のビジネスが一般的な物であるかどうかは保証しないけれど。
普段は鋭いと思われる瞳。
だけれど今は戸惑いと恐れが浮かんでいる。
ーこの石は?
僕は彼に差し出された石片を手に取る。質問する。
彼はジャケットのポケットからハンカチを取り出す。
額に滲んだ汗を押さえながら話始めた。


どこから話をしようか悩んでいる、
今からは話すのは少々複雑な内容だ、
複雑な話がなぜ複雑になるかと言えば、
1つの話が別の話に影響を与えていて、
別の話もまた別の話に影響を与えているからだ、
そして影響を受けた話は元の話にも影響を与える、
影響は乱反射して全ての出来事に影響を与える、
反射した影響はまた別の影響を作り出し、
その影響もまた反射する、
そうして複雑さは増していく、
連鎖ではなく影響なのが話の複雑さを増している、
連鎖は繋がって続いている事だが、
影響は空気の様なもの、
風邪や病気のウイルスみたいなもので、
確かにあるのに明確には見る事が出来なくて、
何処からどの様に感染したのか判断するのが難しい、
言わばもつれ合った糸の様であり、植物の根の様だ、
始まりと終わりがあまり明確ではない、
だからどこから始めれば良いのかわからない、
なので、良く良く注意して俺の話を訊いて欲しい、いいな?、
世界を救うという言葉で何を連想する?、
チャリティー環境保全活動か動物保護か?、
それともハリウッドのアクション映画か?、
ヒーローコミックの主人公?、
小さい頃自分が伝説に出て来る、
勇者かなにかじゃないかと思った事はあるか?、
ラブクラフトという作家が居る、
彼が書いた物語は怪奇小説だ、
後の作家に多くの影響を与えた物語だ、
物語は群として扱われ1つの架空の神話体系を構築していった、
ラブクラフトの生前と死後、
他の作家は架空の神話体系を利用して自らの物語を作り始めた訳だ、
様々な作家が1つの世界観や登場人物を共有して様々な小説を書いたんだ、
神話には神々が登場していて、彼らは善悪の彼岸を闊歩(かっぽ)し、
地球上のみならず宇宙の片隅にまであまねく存在している、
さて次は北アメリカ大陸の南部、中央アメリカの話だ、
ああ、
もうラブクラフトという作家の話は終わりだ、
一旦はね、
さて次は北アメリカ大陸の南部、中央アメリカの話だ、
中央アメリカだ、知っているか?、
アメリカと言うのは国の名前じゃない、
大陸の名前だ、
アメリカ大陸だ、
アメリカ大陸という名称は
アメリゴ・ヴェスプッチというイタリア人航海士に因んで、
名付けられたんだ、
ブーゲンビリアという名前の花がある、知っているか?、
フランス人の探検家ブーゲンビリアが発見したから、
彼の名前が花に付けられたんだ、
花も大陸も同じ様な規則で名前を付けられるものらしい、
第1発見者の名前だな、
だが花も大陸も発見される前から存在していた、
そして生存して繁殖していたんだ、
発見という奴は随分身勝手な見解だ、
そんなアメリゴが発見したアメリカ大陸、
アメリカ大陸の最西はプリンスオブウェールズ岬だ、
プリンスオブウェールズ岬はアラスカにある、
アラスカとはアメリカ合衆国保有する飛び地だ、
アメリカ合衆国は北にあるカナダを飛び越えて、
その先の北の大地、アラスカを支配している、
プリンスオブウェールズ岬の西には、
ベーリング海が広がっている、
ベーリング海を渡った先にはロシア連邦のデジニョフ岬がある、
デジニョフ岬はロシアの最東端、ユーラシア大陸の最東端だ、
アメリカのプリンスオブウェールズ岬と、
ロシアのデジニョフ岬、ベーリング海によって分割されている土地だ、
2つの岬は90キロメートルも離れていない、
そして少し北に向かえば直ぐに北極大陸がある、
これでアメリカ大陸北部の事は分かっただろう?、
次は南の話だ、アメリカ大陸の最南の話しだ、
アメリカ大陸の最南はフロワード岬だ、
フロワード岬はチリが保有している、
フロワードとは制御出来ないという意味の英語で、
この岬が常に強風と豪雨で覆われているから、
大昔の探検家にそう名付けられたんだ、
フロワード岬の先にはマゼラン海峡がある、
太平洋と大西洋を結ぶ海峡だ、
大陸を回り込む為には通らなければならない場所だが、
航海士は神に祈りながら必死の思いで暴れる海の中を進んだだろうな、
北極に近いアラスカのプリンスオブウェールズ岬と、
チリのフロワード岬、
つまりアメリカ大陸というのは南北に伸びる巨大な大陸なんだ、
それがアメリカ大陸だ、
この巨大な大陸はパナマで2つに結ばれている、
パナマにあるサンブラス地峡で結ばれているんだ、
地峡は土で出来た橋の様なものだ、
サンブラス地峡の幅は50キロメートルしか無い、
そんな小さい土塊が、
北は2千4百50万平方キロメートル、
南は1千7百80万平方キロメートル、
合わせると地球上の陸地の約30パーセントを占める大陸を繋いでいるんだ、
サンブラス地峡で繋がっているから、
南北のアメリカ大陸は大きな1つの大陸と看做されている、
だがもともとは2つは別の大陸だった
南の大陸は大昔、南極から分離した、
一方の北の大陸はユーラシア大陸から分離した、
300万年程前に2つの大陸は出会いアメリカ大陸が出来あがった、
元々は別々の存在だったから、
それぞれの大陸に住む動植物は異なる生態系を保っていた、
南北の大陸が繋がる以前、数百万年の孤独の中で、
独自の進化、発展を遂げていたんだ、
そこにサンブラス地峡が出来上がる、
すると2大陸の中でぞれぞれ孤立していた動植物は、
南北の大陸を行き気する様になるんだ、
地峡や空や海を渡り、
ネコ科の生物や、鳥や、虫や爬虫類が交差しだす、
影響を与えあいそれまでとは進化の方向を変える、
あるいは交配を行い繁殖をしていった、
時代が進むと人類が地球史の表舞台に登場する、
彼らも動物達と同じ様に南北の大陸の中で影響を与え合ったんだ、
アメリカ大陸の面白い所は、
別々の大陸から切り離された大陸同士がぶつかって、
また大きな大陸を作り出した所にある、
分離、孤立、そして別の大陸との一体化、
欧州とアジアがあるユーラシア大陸は、
アフリカ大陸とも繋がっている、
エジプトにあるスエズ地峡で繋がっているんだ、
だが元々はアフリカ大陸はユーラシアとは別の大陸だった、
時代が進んでぶつかったんだ、
それと似た様なものだ、
スエズ地峡パナマ地峡には運河が通っている、
人間が作った人工の河だ、船を通す為の水路だ、
運河が出来る事で貿易船は大陸を大回りせずに、
別の海への行き来が出来る様になった、
人間の手で大陸が切り離されたんだ、
自然の影響で数百万年掛けて繋がった南北のアメリカ大陸、
同じ様にして繋がった欧州アジアとアフリカは、
現在は人工的に切り離されているんだ、
人間によって切り離されたんだ、
一方で自然によって切り離されたままの大地もある、
島と言う存在だ、
太平洋やインド洋には数多くの大きな島が浮かんでいる、
スマトラ島やジャワ島、ティモール、オーストラリア、
ここ日本もそうだ、
島に住む動植物は交差せず混合せずに、
独自の進化発展を遂げている、
島はこれからも孤立したままなのかもしれないし、
そのうち何処かとくっつのかもしれない、
島に生きる生物は孤立したまま独自性を保ち進化するかもしれないし、
何処かとくっ付いて交配を行うかもしれない、
さて中央アメリカとはそんな南北のアメリカ大陸の中央に位置している、
中央という名前の通りにな、
ニカララグ、ホンジュラス、ガテマラ、そしてメキシコがある地域の事だ、
そんな中央アメリカは世界から2000年間も隔離されてきた、
人類が作り上げた文化が発展し、
彼らが狭い集落、国家内での取引から飛び出して、
車輪を有する乗り物と船を使い、
他大陸と貿易する事を学び実践しだしてもな、
当時の世界と言えば、欧州、
中東、アフリカ、アジアだけだったからな、
それに世界の王者であるアメリカ合衆国はまだ産まれていなかったんだ、
中央アメリカは外国からの干渉がなく、
2000年かけて独自の文化を発展させてきた、
代表的なのがアステカ文明だ、
彼らの行う神に人間の命を捧げる儀式が好事家たちに有名なあの文明だ、
人間を祭壇に捧げるやり方は色々あった、
生皮を剥いだり、燃え盛る炎に投げ入れたり、
刃物で切り刻んだり、もちろん生きながらだな、
時代が経って中央アメリカに栄えていた文明は滅ぶ事になる、
スペイン人がやってきたんだ、航海者のコロンブスに導かれてな、
大発見時代、欧州の王国による新しい植民地と資源の開拓、
中央アメリカ2000年の文化はスペイン人によって破壊された、
男たちは殺され、女子供は犯された、資源は無くなり、土地は荒廃した、
日本でも学校で習うだろう?、
コンキスタドールという奴らさ、
人的な侵略の後で、
欧州から持ち込まれたある物が原因となって、
中央アメリカの人口は更に激減する、
持ち込まれ物とは病気だ、
よく言うだろう、貿易によって運ばれる物の中でも、
国の歴史にもっとも大きな影響力を与えるのは、
武器と病原菌と鉄だって、
欧州人が罹っても何ともない病気に、
アメリカ大陸の彼らは罹って死んだ、
欧州から運ばれた病原菌に対する免疫が無かったんだな、
だけれど病気を克服して生き残った人々もいた、
生き残った者の中には支配者たるスペイン人と子供を作った人間も居た、
次の時代、中央アメリカにアフリカ人が奴隷として運ばれて来た、
中央アメリカの古代文明は破壊されて、
新しい国が出来上がりつつあった、
欧州からやって来た支配者のスペイン人、
生き残った先代の文明人、連れて来られた奴隷のアフリカ人、
3つの人種によって国が形作られて行く、
支配や叛乱や革命の歴史の中で混血が起る、
そして出来上がった国がメキシコだという訳だな、
次の話だ、アンブローズ・ビアスというアメリカ人の作家が居る、
彼は若い頃兵士だった、南北戦争初期から戦争に参加していた、
奴隷解放軍、北軍の兵士だった、
戦後はジャーナリストになり小説家として活躍した、
アメリカの映画にシックスセンスという奴があったろう?、
実は主人公は既に死んでいました、
幽霊でしたって映画だ、
あの映画の元ネタを書いたのはビアズなんだ、
だが彼の作品で1番有名なのは悪魔の辞典だな、
タイトル通り辞典なんだが、
単語に対する解説が辛辣なんだ、
平和という言葉の解説にはこう書いてある、
2カ国間以上で行われる、戦争と次の戦争の間の騙し合の期間、
マチュアという言葉にはこう書かれている、
余暇を自分の技術と思い込み、
自分の野心を自分の能力だと混同している、
世間の厄介者、
回想という言葉の解説には、
様々な事を付け加えながら、過去では知らなかった事を思い出す行為、
悪魔の辞典は辛辣な言葉を使って言葉の解説が書いている本だ、
さて彼は晩年になってメキシコを訪れている、
当時のメキシコは革命の真っただ中でその取材にビアスは来た訳だ、
彼はメキシコ革命の英雄パンチョ・ビリャに付いてメキシコ各地を回っている、
だがビアスはこの取材の最中に行方不明になっているんだ、
チワワ州に入ってからの行方が分かっていないんだ、未だにな、
もちろん遺体も見つかっていない、
噂は無数にある、
戦闘に巻き込まれて死んだ、政府軍に捕まって処刑された、
脱走兵や蛮人に食われたとかな、
さて、メキシコというか中南米は、
スペインによって征服された植民地だったという事は既に話したよな、
欧州による植民地時代が長く続いた後で戦争が起こった、
司祭にして革命家のイタルゴ神父や、
英雄ボリーバル将軍に導かれた被支配階級の人々は、
中南米各地を解放し欧州からの独立を勝ち取った、
独立戦争という奴だな、
欧州からの独立の後で起ったのがアメリカとの戦争だ、
現在アメリカ合衆国の領土であるテキサス、
テキサスは本来メキシコの物だったんだ、
テキサスというのはそりゃ広い土地でね、
俺も当時はテキサスなんて呼んじゃなかったけどな、
テキサスは本当はテハスという名前の土地だった、
テハスはメキシコの土地だった、
テハスはアメリカ人の移民を受けいれた、
なんせ土地が余っているんだ、
だからメキシコで暮す事を望むアメリカ人に土地を売る事にしたんだ、
メキシコでの資源採掘、
綿の製造をして商売を始めようとしているアメリカ人にな、
商売人とその雇用者家族に限定して移民を認めたんだ、
ニューオーリンズから奴隷と共にやってきたアメリカ人は、
大量の綿を作り輸出した、
テハスはメキシコ、アメリカ双方にとって経済的に重要な土地になった、
そして初期入植者以外のアメリカ人が増えていく、
1819年当時、アメリカは恐慌に襲われていた、
仕事があれば人も増える、
テハスにやって来たアメリカ人の中には不法移民もいた、
テハスに増えるアメリカ人、テハスの経済化、
そして合衆国はテハスを欲しがる様になった、
増え続けるアメリカ人を警戒したメキシコ政府は、
移民受けれ入れを終了した、
メキシコ政府とテハスで暮らしていたアメリカ人との間で、
小競り合いが起こる様になる、
最終的にはアメリカ人による叛乱が起こる、彼らの目論みは成功した、
テハスは独立、
テキサス共和国の樹立だ、勿論メキシコ政府はそんな国を承認しなかったがな、
そして9年後、テキサス共和国アメリカに併合された、
その1年後、テハスを奪還したいメキシコ政府と、
メキシコの土地を更に欲しがったアメリカの間で戦争が起る、
米墨戦争だな、アメリカはメキシコ北部の土地も手に入れようとしたんだ、
メキシコ北部は北アメリカ大陸における太平洋の出入り口だからな、
海洋国家イギリスに負けない為にも、
当時のアメリカには必要な土地だったのだろう、
海を制す物は世界を制すだな、
米墨戦争の結果は酷いものだった、メキシコは大敗した、
なんせアメリカ軍が最新式の銃を使っているのに対して、
メキシコ軍は、
ナポレオンが起した一連の戦争の時に使っていた銃を使用してたんだ、
そりゃ負けるよな、
極力な武器の前に戦術なんかは無意味なんだ、
世論を味方に出来ればまた別かもしれないがな、
ベトナム戦争のベトコンみたいにな、
ともかく米墨戦争でメキシコは負けた、
負けたメキシコは土地を奪われた、
国内を横断する様に流れていたリオ・グランデ川より北の土地を奪われた、
カリフォルニア、ユタ、ネバタ、3つの州の全域、
他4つの州の一部をアメリカはメキシコから手に入れた、
当時のメキシコは敗戦の結果として国土の1/3を奪われた訳だ、
実はこの時にアメリカはメキシコ政府に金を払っている、
戦争で勝ったアメリカは戦争で負けたメキシコに金を払っているんだ、
奪った土地の代金としてだ、
アメリカは1500万ドルを支払った、
それにメキシコがアメリカに対して負っていた借金を帳消しにしてやった、
アメリカ政府は地続きのメキシコが混沌に落ちるのを恐れたのだろう、
隣の国に恐慌の嵐が吹き荒れても得をする事は無い、
不景気、不法移民の急増、犯罪率の上昇、
更なる戦争を仕掛けられるかもしれない、
米墨戦争南北戦争
つまり奴隷解放戦争とも言われる戦争の前に起ったのは学校で習っただろう?、
米墨戦争は1846年に起ったし、奴隷解放戦争は1861年に起った、
だから米墨戦争南北戦争で活躍した将校たちの訓練場にもなった、
ついでに南北戦争を起す原因の1つにもなった、
アメリカはメキシコから広大な土地を手に入れたが、
国土が拡大して人口が拡大した事で国内のバランスが崩れたんだ、
奴隷制賛成派と反対派、南部と北部のバランスが崩れたんだ、
さて次の話しだ、
中央アメリカの古代文明がメキシコによって滅ぼされた話は覚えているか?、
生け贄の話をしたよな、
中央アメリカでもっとも古い文明と言われているのがオメルカ文明だ、
文明は川沿いに栄えるよと言うよな、
黄河文明インダス文明ナイル川のエジプト、
そしてチグリス河とユーフラテス河のメソポタニア文明とかの事だ、
だけどオメルカはメキシコ湾岸で発展したんだ、
だから正確には水がある所に文明は栄えるって言うべきだ、
オメルカも豊かで偉大な文面だったんだからな、
この文明は紀元前13世紀ごろに始まったとされている、
だから大体3200年くらい前の人々だな、
数学が発達していた事や、鉱物を加工する技術は優れていた、
つまりただの古代の野蛮人の集まりじゃなかったんだ、
技術と学問を持っていた、
文明と呼ぶに相応しい高度な社会を展開していたのがオメルカだという訳だ、
オメルカ文明を象徴しているのが巨人像だな、
巨人と言っても頭部だけなんだが、
イースター島のモアイとかあるだろ、あれに似ている、
だけれどあんなヘンテコな顔じゃない、
もっと人間的だ、頭にはヘルメットみたいな帽子を冠っている、
兜かもしれないけどな、
兎も角デカイ頭像だ、高さは2メートルを越えている、
大きな大きな頭だ、デカイ石像だ、
オメルカ文明もアステカ文明の様に神に生け贄を捧げる宗教的文化があった、
さて次の話は時代が大きく飛ぶぞ、
メキシコには国民的な祭りがある、
ブラジルはリオのサンバカーニバルや、
中国の旧正月を祝うフェスティバルみたいな物だ、
毎年10月の31日から11月2日までの3日間を、
メキシコでは死者の日と言う、
31日は前夜祭、
1日に子供の霊がこの世界に帰ってきて、
2日には大人の霊が帰って来る、
家族や仲間内で死者について話、懐かしみ、慈しみ、
酒を飲んで踊り騒ぐ、
欧州にも死者の日はあるんだがあっちは粛々とした雰囲気だ、
日本にもボンがあるだろう、
比べるとメキシコの死者の日は祭りと呼ぶに相応しい、
アメリカのハロウィンも、
死者の日が変形して出来上がった祭りだという説がある、
アメリカのハロウィン、メキシコの死者の日という事だな、
そんな死者の日は大昔は夏に行われていた祭りだったんだ、
スペイン人の支配者達によって、
キリスト教カトリックの文化が中南米にもたらされてからは、
冬の祭りになった、
伝統とキリスト教が和合したんだな、
カトリック教会の死者の日は冬にやるからな、ハロウィンも冬にやる、
さてではキリスト教が取入れられる前は死者の日はどんな祭りだったか、
分かるか?、
太古の中南米で行われていた死者の日は
アステカやオメルカの神と死者を讃える祭りだったんだ、
メキシコの価値観では死は悪い事じゃない、
なんせ死んでこそ天国に行ける訳だしな、
アステカの時代では生け贄になって、
王や司祭に殺される事は名誉な事だった、
そして宗教は違えど、
死者は一時的にこの世に戻ってくる事があると信じられていたんだ、
さて、アメリカが南北に別れて行っていた奴隷解放戦争の最中とその前後、
メキシコは何をしていたのか?、
メキシコ北部を奪ったアメリカは、
国内の勢力バランスを激しく崩して戦争をした、
アメリカに土地を奪われたメキシコも同じ様に勢力バランスを崩した、
鳴りを潜めて居た文化的なマイノリティーが叛乱を起こした、
海からはアメリカ人の海賊が侵攻してきた、
保守派と自由主義派との間で政治闘争が起った、
軍縮を図る政府を疎んだ現場主義の軍人が軍事クーデターも起した、
因にな、文化的なマイノリティーというのはマヤ人の事だ、
アメリカ大陸中西部で発展していたマヤ文明を築いた人々の子孫だな、
この時代にも先祖の文化を脈々と受け継いで暮らしていたんだ、
しかしマイノリティーってやつは良く分からないよな、
少し前のアメリカでは文化的なマイノリティーと言えばヒスパニックだったが、
今ではアメリカの人口の1割はヒスパニックだ、
一国の未来がどうなるかなんて誰にも分からんな、
人口の1割も居れば数的にも政治的にも大きな力になる、
南北戦争の最中は、アメリカのメキシコに対する牽制の矛先が弱まった、
海外どころじゃなかったからな、
これを機と見たフランスがメキシコに進軍してきた、
メキシコは敗戦を重ねて、
一時期のメキシコはフランスの物になったんだ、
一方でアメリカでは北軍が勝利して戦争を終わらせていた、
1865年の事だ、
当時のフランスは第二帝政時代だ、
ナポレオンが起した一連の戦争の後を継いだ、
甥のボナパルトが皇帝の座に着いていた時代だ、
そんなフランスによってメキシコは支配された、
自国の隣に、
欧州の長たるフランスの傀儡国がある事を良しとしないアメリカ政府は、
直ぐさまメキシコに支援を送った、
その結果メキシコとフランスの戦争は、
フランス対メキシコアメリカ連合の戦争となり、
メキシコの逆転勝ちで終わった、
アメリカにとっての最大の敵は欧州だったという訳だな、
敵の敵は味方、だからメキシコを支援した、
メキシコは前の戦争で、
アメリカに土地を奪われこの戦争ではアメリカに貸しを作った、
以降、メキシコはアメリカの実質的な属国に成り下がった、
今でもそうだ、
現在、アメリカ人の大学生がハイになったり、
奴らが恋人との享楽的なセックスをするために使う麻薬を、
メキシコは日夜作り出してアメリカに輸出し続けている、
組織的な犯罪者が貧民を搾取して麻薬を作り輸出している、
組織同士は利益を得る為に争い市場を拡大する、
その戦いは金よりも言葉よりも銃弾と刃物が飛び交う戦場で、
お陰でメキシコは血の海だ、犯罪者と貧民の血で大地が腐敗している、
このメキシコの麻薬を巡る戦争では5万人が死んでいる、
まあともかく、フランスとの戦争は、
アメリカの援助のお陰で勝つ事が出来た、
その時の大統領がフアレスだ、
ニート・パブロ・フアレス・ガルシア、
神父であり弁護士であり最高裁長官であった男、
スペインの侵攻以来、先住民族から初めて選出された俺達の指導者、
フアレスの父親はサポテカ族だった、
サポテカ族が作り上げたサポテカ文明は紀元前からメキシコに存在していた、
アステカやマヤと並ぶ文明だった訳だ、
そんなサポテカ族の血を引くフアレスは国内の混乱を収めた男だ、
フランスとの戦争ではチワワ州を拠点として仏軍の猛攻を耐えぬき、
アメリカと手を結んで戦争に勝利した、
戦後はメキシコの制度や法や教育を改革、
そして自由と秩序を命題とする哲学を取入れてメキシコ社会の近代化を図った、
だからフアレスは近代メキシコを誕生させた偉大なる建国の父という訳だな、
彼は心臓発作で死ぬまで国をまとめあげた、
ここからはメキシコで起こった革命の話だ、
アメリカ大陸の先住民はスペイン人に征服された、
支配者と奴隷という力関係が産まれた、
彼らの子孫は力関係を維持したまま社会を作り上げたが、
やがて被支配階級の人々が立ち上がりスペイン本国と戦争をして独立する、
アメリカとの戦いには負けて、
内戦と海賊の侵攻を平定して、
欧州が責めて来た際にはアメリカと組んだ、
アメリカ大陸に雪崩込まんとする欧州の影響力を退けた、
そしてメキシコは近代化する、
近代化というのは大抵急速に行われるもので、
急速な近代化は社会に歪な構造を生じさせてしまうものだ、
貧富の格差、農村部と都市部の格差、
軍人と官僚、商人と労働者、
すると次に起るのは革命という訳だ、
フアレスは名君だった、
そして名君が死んだ後には大抵の場合で混乱が起こる物だな、
ローマの時代から変化しない歴史のお約束事だ、
跡目を継いだのがディアスだ、
ホセ・デ・ラ・クルス・ポルフィリオ・ディアス・モリ、
ディアスは大統領選でフアレスとも闘った事がある政治家だ、
フアレスの死後、
数人の大統領が誕生した、
ディアスは彼らとの大統領選で敗北している、
数度の敗北の後、彼はアメリカに亡命した、
後にメキシコで武装蜂起した、
蜂起は成功してメキシコ大統領に自分を任命した、
彼は政治家になる前は軍人でフランスとの戦争でも活躍した英雄だったんだ、
大統領になった後はメキシコの近代化を更に推し進めた、
フアレスもディアスも自由進歩主義者で自国の近代化を目標に掲げていた、
だがフアレスは文官でディアスは武官だった、
近代化の意味と実現の仕方が彼ら2人の間では少々違っていたんだ、
ディアスは外国からの投資を集めた、
経済発展、文化の進歩、
だが同時に特権階級、資本家が優遇され、
国内の産業を外資に売り渡す事になった、
近代社会という言葉と概念はこの時代、欧州の事を指していた、
だから近代化の名の下に近代社会、
つまり欧州社会的な価値観では野蛮と見られるメキシコの文化、
風習は規制されて行く事となった、
欧州の力を戦争で退けたメキシコは、
文化的には自ら欧州に近づいた訳だ、自国の伝統を消しながらね、
きっと欧州外のどこの国でもやって来た事だろうが、
近代化の結果として富める者と貧しき者の格差が広がる格差社会を生んだ、
農民の土地は奪われて少数の大地主に与えれた、
いつぞやの奴隷と主の関係が復活した訳だな、
スペイン人と先住民の間ではなくて今度はメキシコ国民同士の間でな、
当然叛乱は起った、
独立戦争を始めとする多くの戦争を経験している我々メキシコ人は、
闘うという事を知っているし、闘う事を臆しない、
だが各地で起った叛乱はディアス将軍による軍事的弾圧で平定された、
しかし時代の風向きは常に変化している、
1907年に起ったアメリカ恐慌が、
メキシコの革命にとっては良い契機になった、
本国が風邪を引けば属国は病気になるというあの訓言の通りだ、
メキシコの経済も停滞したんだ、
上手く行っていた様に見えたディアス政権の力が弱まった、
そんな中で行われたメキシコ大統領選挙、
ディアスは負ける事を恐れて対立候補のマデーロを逮捕したんだな、
ありがちな話だ、
そしてそんなディアス政権の横暴に怒り立ち上がった者達が居た、
打倒政府を目指す革命が起きた、
革命の指導者は4人居た、
サバタ、ビリャ、カランサ、オブレゴン、4人の英雄だ、
彼らはそれぞれに異なる勢力基盤を持ち、活動する地域も異なっていた、
思想も多少違う、彼らの立ち位置が違うからこそ、
お陰でメキシコ全土を巻き込んだ戦いになった、
だから革命は成功した、
ディアスはパリに逃げてパリで死んだ、
モンパルナス墓地に墓があるんだ、
モンパルナス墓地だぞ、
モーパッサンボーヴォワールサルトル
名だたる作家や学者と同じ場所にディアスの亡骸は埋められているんだ、
有名な軍人でモンパルナス墓地に葬られているのは、
フランス人のドレフェスくらいなものだ、
さて、政府を打倒した後で案の定、内乱が起こる、
革命政権内での内乱だ、
しかし内乱ってのはなんでややこしい進展をするんだろうな、
俺が考えるに、政治的な混乱、
内乱って奴は人間関係のいざこざと似ているからだ、
いや人間関係のいざこざその物自体と言ったって良いんだ、
簡単な人間関係なんてものはこの地球上の何処にも存在していないからな、
革命が成功してディアスが逃げた後、
メキシコではマデーロが大統領になった、
フランシスコ・イニャシオ・マデーロ・ゴンサーレス
大統領になったんだがこいつが格差を是正する事ができなくてな、
直ぐに革命の指導者の1人、
サバタ率いる軍がマデーロ政権に対する叛乱を起こした、
エミリアーノ・サパタ・サラサール、
サパタが起した叛乱を平定する為に遣わされたのが、
マデーロの部下で軍事を握っていたウエルタ将軍だ、
ところがウエルタはろくに戦闘を展開しなかった、
ウエルタは実は反乱軍と通じていたんだ、
戦闘を長引かせてマデーロを政治的に不利な状況に追い込んだ、
そして叛乱は成りマデーロはサバタ率いる軍に殺された、
ウエルタは将軍から大統領へと昇格した、
だげウエルタは軍人としては良いが政治家としては能力が無くてな、
マデーロは国政を改革できなかった、だが人望はあった、
ところがウエルタは人望さえなかった、根っからの軍人だったんだ、
いや軍人だって人望を持っている奴は多くいたさ、
だから再び叛乱が起こった、
再びサバタ、ビリャ、カランサ、オブレゴンの4人の英雄の登場だな、
彼らの率いた軍や民衆が、
ウエルタの政府軍に対して各地で戦闘を行った、
徐々に政府軍は劣勢になっていく、
革命勢力が優勢になる一方で勢力内での意見の食い違いが起る、
革命勢力内での対立が表面化していった、
共通の敵を失えば結束も弱くなるというもんだ、
ここでいう対立ってのは革命勢力内での右翼と左翼、
保守派と改革派の争いだな、
カランサとビリャが対立する、
オブレゴンは両陣営の意見を取りまとめて関係修復を図る、
だが対立が深刻な状態になるとオブレゴンはカランサ側についた、
サバタはビリャに同調した、
カランサ、オブレゴン陣営とサバタ、ビリャ陣営の争いだ、
最終的に勝利したのはカランサ、オブレゴン陣営だ、
奴らと来たら騎兵突撃を繰り返すビリャ、サバタ陣営に、
最新式の機関銃で無数の弾を撃ち込みやがったんだ、
戦況は終止、奴らの優性で勧められた、
強い武器ってのはそれだけで強いな、当り前だが、
まあ本当に酷い戦いだったよ、
因にこの時は1914年だ、
欧州では一回目の大戦が始まった年だな、
メキシコは国内の内乱で手一杯だったんだ、
逆にいえば世界各国が自分の国の戦争に忙しかったから、
メキシコの内戦に組み入る事が出来なかったとも言えるけどな、
今にしてみれば、
メキシコでの革命は全てアメリカの掌で転がされているだけだった様に思える、
さて勢力内での争いに勝利したカランサは大統領になった、
ベヌスティアーノ・カランサ・ガルサ、
メキシコ革命はここで一旦終わった、
だがカランサは典型的なメキシコの官僚だった、
国外には目は向いていたが、
国内それも革命を起こした貧困層には目を向けていなかったんだ、
しかしカランサの部下には農民から出てきた者、貧困層から出てきた者、
あるいは貧困層の友人を持つ奴らが多くいたんだ、
戦争の最中、同じ釜の飯を食いながら、
未来の事や過去の事、人生の悲喜こもごもを語り合っていれば気持ちも繋がる、
社会的な階層の壁を越える事もある、
この当時、そんな彼らによって現代的なメキシコ憲法が制定されたんだ、
敵対したサバタ、ビリャの意見も取入れられていた、
どっこいカランサは憲法を無視した法案を通しまくったんだ、
俺達部下の努力も無駄になる、まったく笑えるだろう?、
カランサの行いに不満を持った労働組合ストライキを起こした、
カランサ政権はストライキを起した労働者を逮捕し、殺害した、
一方でその間もサバタとビリャはカランサ政府に対する反抗を行っていたんだ、
だが1919年にはサバタは暗殺されてしまった、
カランサの部下によるだまし討ちだ、
第1次大戦が終わった1年後の事だ、
サバタと組んでいたビリャはその後も政府に反抗を続けていた、
フランシスコ・ビリャ、
ビリャはカランサ政権への反抗を続ける、
ビリャはカランサ政権の行いを許しはしなかった、
それどころかカランサ政権を承認したアメリカ政府をも許しはしなったんだ、
ビリャ率いる反抗軍はアメリカ人技術者を殺してアメリカ軍の駐屯地を襲った、
この時、第一次対戦は既に終わっていた、
報復としてウィルソン第28代アメリカ合衆国大統領は軍隊の派遣を決定した、
ビリャを捉える為の軍隊だな、
だがビリャはチワワ州を縦横無尽に駆け回った、
アメリカ軍がビリャを捕える事が出来なかったんだ、
ビリャはチワワ州の英雄だった、だから多くの協力者がいたという訳だな、
政治家や権力者、一般市民までの協力者だ、
アメリカ軍はビリャをチワワ州に放したまま帰国した、
だがビリャも大規模な反抗活動が一時的に出来なくなった、
彼の部下や副官が殺されてしまったんだ、
以降、アメリカは中南米で行われるストライキに対して、
積極的に軍事介入する事となる、
バナナ戦争と言うやつだ、
バナナ農園で働く者を筆頭に労働者が反抗を起す、
農園を持っているのはアメリカの企業だった、
だから企業を守る為にアメリカ政府は軍を派遣する、
そういう建前だ、戦争と言っても一方的な物だった、
労働者が不満の声を上げる集会に戦艦から砲射撃が加えれた、
因にビリャ討伐対の副官はジョージ・パットンだった
第一次大戦、第二次大戦を通して活躍した戦車隊の王様のあいつだ
メキシコへの派遣は後の陸軍大将パットンを鍛える為の礎みたいなものだった、
さて、そんなこんなで対立陣営を黙らせたカランサ大統領なんだが、
部下や国民を裏切り続けた彼にはもう求心力は残っていなかった、
部下や国民、労働組合や地域連合からは、
カランサの盟友であるオブレゴンが代表になる事を求められた、
アルバロ・オブレゴン・サリード、
ここからはメキシコ史上なんども起った事の繰り返しだ、
カランサは盟友だったオブレゴンの逮捕を決めた、
オブレゴンは逃走した、オブレゴンは叛乱の宣言をした、
内乱の開始、鳴りを潜めていたビリャもオブレゴンに協力した、
オブレゴンはサバタの残党勢力とも手を結んだ、
彼らは首都まで侵攻した、カランサは逃走する、
そして逃走中に撃ち殺された、
オブレゴンは大統領となりサバタ、ビリャ陣営と和平を結ぶ、
サバタは死んでいたが、
ビリャはチワワ州で牧場主となって平穏に暮らした、
だが数年後、出掛けからの帰り道、ビリャは何者かに殺された、
目撃者もおらず、犯人は未だに分かっていない、
頭を割れて死んだんだ、
という所でこの話は終わりだな、
その後のメキシコの事も簡単に話そうか、
オブレゴン政権下ではメキシコは発展しつつも、
アメリカとの関係で国内や国外で物騒な事件が起った、
再び叛乱が起ったんだ、
叛乱は鎮圧されたがオブレゴンは結局カトリックの過激派に暗殺された、
彼はメキシコ社会の近代化、政教分離を押し進めるあまりに、
宗教への締め付けを厳しくし過過ぎたんだな、
彼の後を引き継いだのがオブレゴンの部下だったカリェスだ、
プルタルコ・エリアス・カリェス、
以降10年間、メキシコ大統領は3回変るが、
全てカリュスの操り人形だった、
4人目のカルデナス大統領もカリュスのお気に入りだった、
だがカルデナスはカリュスの協力の下に大統領に就任すると、
カリュスの勢力を一掃した、
組織、行政を改革して、メキシコを新しい国にした、
革命戦争の影響、亡霊を行政から追い払ったんだ、
フアレスが建国の父ならば、
カルデナスは近代メキシコの父だな、
1943年の話さ、
ここで1910年から続いてた長い革命が終わった、
長い話で悪かったな、
でもまだ別の話題があるんだ、そして最後にオチがつく、
そろそろ終わりだから、どうか聞いてくれ、
今から80年前の話だ、
チワワ州で人骨が見つかった、
見つけたの1人の少女だ、
少女は友人たちと炭鉱の跡地で遊んでいたんだ、
人工的に掘られた炭鉱の中に天然の洞窟があったんだ、
炭鉱は長い間放ったらかしにされていた、
その間に炭鉱と洞窟を仕切っていた壁が崩れて繋がったらしい、
そして少女は洞窟を見つける、そこで骨を偶然見つけた訳だな、
骨とは頭蓋骨の事だ、
この頭蓋骨はメキシコ政府によって回収されて科学的に分析された、
5歳程度の子供の頭蓋骨だと分かった、
頭蓋骨の持ち主であるこの子供は900年程前の人物らしい、
ここまでは普通の事だ、
大昔の子供の骨が見つかるのはそこまで珍しい事ではない、
おかしいのはここからだ、
頭蓋骨の頭部という言い方は変だが
つまり頭蓋骨の脳みそが入っている部分が異様にでかかったんだ、
頭がぽっこりと膨らんでいたと言うべきか、
頭蓋骨の中に納まっていたであろう脳みその容量が計算された
その結果、
成人男性の1.3倍も大きい脳みそが入っていただろう事が判明した、
5歳児の頭蓋骨なのにな、
頭蓋事はその異質な形状からスターチャイルドと呼ばれる様になった、
星の子供だ、
星の子供と呼ばれたのには訳がある、
チワワ州には星に由来する伝説があったんだ、
伝説曰く、時々空から人がやってきて、
現地の人々と交わり子を残す、
ギリシャだったら空からやってくる奴の事を神と呼んだだろうが、
チワワではそいつらは宇宙人と言う事になっている、
だからチワワ州で見つかった頭のデカイ子供の骨をスターチャイルドと呼んだ、
あの骨は人間と宇宙人の間に産まれた子供の亡骸なのかもしれない、
伝説とやらにありがちな展開なんだが、
宇宙人と地球人と間に生まれた子供は不思議な力を持っているらしい、
超能力とかそういう奴だな、
よし、次の話が最後だ、
俺が一番最初に話した怪奇小説ラブクラフトの事だ、
怪奇小説ラブクラフトが描く神々の中にハスターという名前の奴が居る、
でも実はハスターという名前の神を創作したのは彼じゃない、
悪魔の辞典を書いたビアスの事は覚えているか?、
メキシコで行方不明になったアメリカ人の作家の事だ、
ビアスが書いた羊飼いハイタという短編小説に、
ハスターの名前が初めて出て来る、
1891年に発表された物語だ、ラブクラフトは当時まだ1歳だな、
ハスターは羊飼いの神様だ、
羊飼いの神様と言えばカトリックの神なんだが今はまあいいや、
ハイタは羊飼いの少年で信心深い、
ハスターへの毎朝の祈りを忘れない、神への祈りだ、
やがて少年は空から下りて来る美しい乙女と出会う、
ハイタは乙女と話しをして草原を走り回る、幼い少年達の遊びだ、
だが乙女はいつの間にか消えてしまう、
後日少年は再び乙女と出会う、そして乙女はまた消える、
乙女とは神であるハスターによって与えられた、
加護や幸福の象徴という話らしい、
美しいものがふと落ちて来て、ふと消える、
そんな話だ、長い話もこれで終わりだ、
あとは纏めだけなんだが、
どこから纏めようか迷うな、
ハスターを創作したビアスはメキシコのチワワ州で行方不明になった、
彼は行方不明になる以前からメキシコに通っていた、
取材兼旅行としてな、
まあなんせアメリカとメキシコは地続きの隣国だからな、
取材もし易かったんだな、
彼はその取材でチワワ州に伝わる神話を調べていたんだ、
覚えているだろ、あの宇宙人と人間が交わる神話だ、
彼の行動は記録に残っている、
彼の日記が今に残されているんだ、なんせアメリカの大作家だからな、
彼が創作したハスター、
この架空の神も、空から降りて来る乙女も、
彼の日記によればメキシコ旅行取材の賜物と言う訳だ、
元を辿ればハスターもメキシコの神話に伝わる宇宙人だという事だな、
ハスターを換骨奪胎したラブクラフトが描いた神々は、
後進の作家により様々な物語世界に存在する事になる、
ラブクラフトが作り出した世界観を自分の作品に利用したという事だ、
彼らが描く神はラブクラフトに倣い殆どが宇宙を支配する神で、
宇宙に住んでいる、
ラブクラフトは生前よりも死後に評価された作家だ、
全集も死後に出版されている、
そんな全集の中にはラブクラフトが観た夢の話が収められている、
彼曰く、夢の中に度々ビアスがやってくる、
そして2人でチワワ州に伝わる伝承を語りあったという、
オメルカの人々が作った巨大の石像、
それが巨大な頭だけの物だったと言う話しは覚えているか?、
スターチャイルドに関する伝説は、
オメルカ文明の時代には既に成立していた事が分かっている、
オメルカ文明に関しては未だに多くの事が闇のままだ、
正体不明で未知の文明、
だが宗教観に関する断片的な情報は残っている、
今に残る情報の断片曰く、オメルカの神は空からやってくる、
石像は神を模様して作られているらしい、
あの頭がデカイ石像の事だよ、
ここでスターチャイルドの伝説を思い出して欲しい、
スターチャイルドの伝説とオメルカの神話は似ている、
これは偶然か?、偶然かも知れないな、
スターチャイルドの伝説が成立した時代と、
オメルカが栄えていた時期は同時期だ、
これは偶然か?、偶然かも知れないな、
でも偶然ではないかもしれない、
共通するのは空から降りて来るものとで頭がデカイ事、
元は1つの伝説だったのかも知れない、
つまりだ、スターチャイルドは宇宙人と地球人の間に生まれた子供で、
スターチャイルドが実在するならば、
オメルカが崇めた神とは宇宙人の事で、
彼らが彫った石像は、
宇宙人かスターチャイルドと同一の存在を象った物なのかもしれない、
地球上には遥か昔からスターチャイルドがいたのかもしれない、
スターチャイルドに関する重要な事が幾つかある、
まず頭蓋骨しか見つかっていないと言う事だ、
身体に当る部分の骨は見つかっていないんだよ、
死者の日はオメルカ文明の時代からあったと言う話はしたな?、
時代が進むにつれてアステカの影響とカトリックの伝来で、
死者の日の性質を大きく変化した、
じゃあ原始的な死者の日どういう形だったのか?、
もちろん死者と神を讃えていた、
だが讃え祀っていた死者が重要だ、
死者とは死んだ人間全員の事を指していた訳ではなかった、
選ばれた死者の事だったんだ、
更に重要なのはその選ばれた死者の骨の方だった、
特別な骨は祈りの対象で、
骨に触れれば特別な力を得られると信じられていたんだ、
特別な力というのは、
幸運を得られたり病気が治ったりだな、あるいは不死の力を得られるとか、
まあ何処にでもある話だよな、
偉大とされる人間や、
神性とされる物を拝み触れると自分にもその力が宿ると言う信仰だ、
イエス・キリストが最後の晩餐で使用した杯に、
水を入れて飲むと病気が治るとかな、
ヒンドゥー教異端派のアゴーリーは死体の肉を食う、
死体には精神が残されていて、
肉を食う事でそれを取り込む事が出来ると信じているからだ、
仏教の仏像は拝む事で加護を得られると信じられている、
これは仏の姿を真似た物を作れば像に仏の力が宿ると考えられているからだ、
中南米古代文明を調査している研究者は多くいる、
歴史学者、考古学者、民俗学者社会学者、
文化人類学者、宗教学者、神話学者、
言語学者ユング派の心理学者、芸術学者、構造主義の哲学者、
メキシコの古代人の一部は死者の日、
特定の骨を祭壇に掲げて皆で祈っていた
特別な骨と聴いて多くの学者は初め社会的に地位の高い人物の骨を推測した、
部族を束ねる王や長、或は宗教者の事だ、
または敵対している部族の人間の骨や、
生け贄にされた物の骨だ、
スターチャイルドの骨が見つかった事で彼らの推測は覆えされた、
スターチャイルドの骨は洞窟で発見された、
洞窟は天然の物だったが、人が手加えた痕跡が見つかっている、
洞窟内で火を使用したと思われる跡や、
壁に描かれた幾何学模様などがそれだ、
重要なのは洞窟からは骨が1つしか見つかっていないという事だ、
骨とは勿論スターチャイルドの頭蓋骨の事だ、
洞窟から1つの骨しか見つかっていないという事は、
ある状況を指し示す大きな証拠になるんだ、
歴史を観ると大規模な飢饉が何度も人類を襲っている、
原因は水不足で食物を作れなくなってしまう場合もあれば、
洪水で土と食物が流されてしまう場合もある、
気温が極度に低い事や高い事の影響もあれば、
害虫が大量には発生して全てを食い尽くされてしまう事もある、
疫病で食物が死滅する事もある、
1850年の頃だ、イギリスの話だ、
当時主食だったジャガイモが疫病で全滅した、
アイルランドのジャガイモ飢饉は有名だな、
主食を失ったアイルランドは人口の4割を失った、
アイルランド人の一部はアメリカに新天地を求める事にした、
アメリカは都合の良い国だった、何せ貴族や王が居ない国だ、
英語を使えるアイルランド出身の白人の彼らには、
アメリカに渡っても差別が降り掛からないだろうと考える事が出来た、
当時のアメリカは工業化のまっただ中で大量の働き手を世界中から求めていた、
そう思って彼らはアメリカに渡ったんだ、
家族、友人、見知らぬ同国人と共にな、
だが飢饉から逃れる様にアメリカに渡ったアイルランド人は貧乏くじを引いた、
アメリカに辿り着く前に船の中で死ぬ者や病気にかかる者が居た、
多くのアイルランド人がアメリカ合衆国に辿り着く前に死んだんだ、
無事にアメリカに辿り着いたアイルランド人はアメリカでは移民となった、
しかし移民となった時期が他国民の移民よりも遅かった、
だから職場も住居もすでに満員だった、
先にアメリカに住まう事に決めた移民が、
主だった仕事に就き、住宅に住んでいたんだ、
彼らの居場所はアメリカにもなかった、
仕方なしにアイルランド移民は、
他国の移民がやりたがらない仕事に就くしかなかった、
消防士や警察官などは現代でも彼らこそが代表する仕事だ、
住む場所にしても職業と同じだった、
アイルランド移民の一部は、
深い森や荒野、凍える様な寒さが吹き荒れる山岳部で住む事を選んだ、
中西部のミズーリ州のオザーク高原、
オザーク高原は寒く食物も育たないが、
アイルランド移民の一部はそこに住着いた、
自分達で土地を耕し家を建てた、
そこはイギリス本国とは違い、
キリスト教カトリックでも差別されない場所だった、
なんせ自分達で作った街だ、
アメリカは自由の国で、近代化して以降、
自分達の生活や生きる上での哲学に反した集団が存在しても、
自分達に損害や迷惑を与えないならば放っておくと言う信条があった、
異質でも異端でも、迷惑を掛けないならば殺される事はなかった、
そこが当時のイギリスとの違いだな、
なんせキリスト教カトリック信者というだけで殺された時代を、
アイルランド人の彼らは経験していたんだからな、
オザーク高原に住む彼らは独自の哲学と自警団を持った、
今でも彼らの子孫がそこで暮らしている、
人が飢饉の原因となる場合もある、
歴史を振り返ると支配者による意図的な飢饉の演出が見られる、
毛沢東による大改革は、
文化文明の改革が急速過ぎた為に自然環境の秩序を壊した、
結果として数千万の中国人が死んだ、
畑に作物が育たなくなったんだ、
スターリン共産主義の実現を夢見て大規模農業政策に舵を切ったが、
生産と流通の非効率化と強制的な作物の徴収により、
ソ連、そしてウクライナカザフスタンを始めとする東欧周辺国で、
数千万の餓死者を出した、食い物を国が奪えはそうなるよな、
飢餓でなくとも大量に人が死ぬ、
ナチスドイツはユダヤ人を強制収容して大虐殺を行った、
カンボジアではポル・ポトが指揮するクメール・ルージュが政権を取ると、
共産主義に異を唱える者や、将来的に唱えそうだと思う者達を虐殺した、
インドネシアでは共産主義者だったスカルノが失脚すると、
政府の主導により共産党員狩りが始まった、
殺されたのは共産党員とは無関係の人間が大半で、
死亡者は100万人を超えている、
アフリカのルワンダでは当時の政府と革命勢力が政権の奪取を行い、
国内が混乱した1994年の100日間で100万人が殺された、
この虐殺は政府や軍が行っただけではなかった、
ルワンダはその他のアフリカ諸国と同じく複数の部族により構成されていた、
ルワンダを代表する部族がフツとツチだ、
部族と言っても住む場所が離れていた訳じゃなかった、
彼らは隣人だった、そんな隣人が2つの部族に別れて殺し始めたんだ、
フツとツチは本来は同じ部族だった、
ところが欧州人がアフリカを支配し始めると、
部族の分化が開始された、支配者は如何にも科学的な物言いをして、
更に聖書まで持ち出して、聖書を由来にして、
1つの部族を2つの部族に分けたんだ、そして片方を社会的に優遇して、
もう片方を被支配者層に押し込めた、人間に価値を付け始めたんだ、
彼らはいがみ合う様に仕向けられたんだ、
そちらの方が統治には都合が良かったんだろう、
時が進んで欧州人はアフリカ支配から表面上は撤退した、
その後で虐殺が起った訳だ、
人が大勢死ぬのは病気が原因の場合もある、
1350年頃から欧州を中心にしてペストが大流行した、
死者は9000万人とも言われている、
スペイン風邪は20世紀の始めに流行した、
こちらの死者は5000万人だ、
アジアではコレラの流行が各地で度々起こっている、
その度に万を越える死者を出している、
人が集団での自殺を選ぶ事がある、
ロシア正教の教派には古儀式派がある、
古儀式派は、
17世紀のロシアで行われた宗教改革に反対した教派として知られている、
彼らは結果として改革者にしてロシア帝国初代皇帝であるピョートル1世から、
迫害される事となる、
古儀式派最大の施設はソロヴェツキー修道院で数百人の修道士が集まっていた、
軍隊を派遣されるも数年間必死に抵抗していた彼らだが、
遂にはこの宗教的と政治に関する争いに負けの兆候がある事を認めた、
そして集団自殺を選んだ、
ソロヴェツキー修道院で自決した者の数は。
200人から300人と言われている、
アメリカ人はジム・ジョーンズはキリスト教新宗教である人民寺院の教祖だ、
アメリカで起こった教派だったが後にカルト化していき批判に晒された、
批判から逃れる為に信者900人は、
ジム・ジョーンズに率いられガイアナに移った、
その後、島では強制的な労働や暴力、
監禁や性的な犯罪が行われているという噂が立つ、
視察の為に彼らの街を訪問したアメリカの政治家は、
彼らによって計画的に射殺された、
これを契機に自らの宗教の破綻を実感したジム・ジョーンズは、
信者に自決を行わせた、毒を飲ませたんだ、
彼は妻子も自殺させた後で拳銃で自殺している、
自殺者は900人を越えている、
集団自決は宗教に関する事だけではない、
アメリカ軍に攻め込まれた日本の沖縄の集団自決や、
古いところだとローマ軍に囲まれたユダヤ人1000人弱が、
山岳部の要塞で集団自殺している、西暦70年、
イエス・キリストが死んで40年程しか経っていない時代の話だ、
他にも敵の手に落ちる事を良しとしない故の自殺は歴史上数多くある、
ジョン・ゲイシーアメリカの有名な殺人者だ、
少年達を家に誘っては地下室で殺して、
彼らの遺体を床下に埋めていた、その数は実に33人、
ドイツの連続殺人犯フリッツ・ハールマンは、
30人から40人前後の人間を手にかけている、
被害者の人数が不明瞭なのは彼は遺体を自宅で解体して、
何らかの方法で肉を処分、
骨は必ずライネ川に棄てていたからだ、遺体がないから人数が判らない、
フランスはパリの地下にはカタコンブがある、
カタコンブは観光地になるほど有名な地下墓地だ、
パリと言う国は常に遺体の埋葬場所に事欠いていた都市だ、
都市が発展し人口が増えるとそこで死ぬ死人も増える、
結果として更に死者の埋葬場所に困る事になる、
パリ周辺の墓地や教会の下には大量の死者が埋まっていた、
あまりに多かった物で土や水に影響を与えて問題になった、
一方でパリの人口が増えるという事は、
パリには新しい住居が多く必要になるという事だった、
パリの建物は石で出来ている、
石はパリその物の地下から切り出された物だったんだ、
建物が建ち石が掘られる事に地下は空洞化した、
地下の落盤や管理、老朽化が問題になった、
そこである1人の工事監督が名案を思い付いた、
死者の亡骸が多く眠り飽和状態の地下と、
空洞化して何も無い都市の地下を結びつけた、
問題が別の問題を解決した訳だ、
土に眠る死者は既に骨だけになって居た、
人骨を墓地からパリの地下に運ぶ作業は1年以上の歳月を掛けて行われた、
これ以降、パリ周辺で古代の戦場跡や墓地跡から人骨が大量に見つかると、
全てがカタコンブに運ばれる事となった、
現在で600万を越える古きパリ市民がカタコンブに眠っている、
人骨はパリの地下に運ばれて壁や柱の様に積み上げられた、
実際に地上を支える役割も果たしている、
主君が死ぬと仕えていた部下が後を追って死ぬ事がある、
そして主君の墓に一緒に埋められる、
古代日本の女王卑弥呼が亡くなった際には、
彼女に仕える部下100人が死に彼女の墓で一緒に眠っている、
古代エジプト文明の統率者ファラオが死ぬとミイラになる為の術を施された、
ミイラはピラミッドは保管された、
この墓地からは殉死者と見られる多数の人骨が見つかっている、
歴史上こう言った事は数多く繰り返されている、
これを嫌った古代の知恵者が、
殉死者の代わりに墓に入れる人形を考えて作り出した、
そして人形には力がある事を認めさせた、
人形を墓に入れれば殉死者を墓に入れるのと同じ意味があると認めさせたんだ、
古代中国の秦を起した始皇帝
彼の墓には兵馬俑がある、
兵馬俑は土で作った人馬が数千と並んでいる、殉死を防いだ人形の例だ、
王に仕える部下とは、王の部下になる程の有能な人物だ、
王と有能な官僚やら軍人が纏めて死んだら残された国はどうなる事か、
統治者にとっても殉死はやっかいな問題だったのかもしれないな、
だから始皇帝の墓地には大量の人形が一緒に眠りについている、
いま俺が話していた事は人の死に場所についての事なんだ、
或は死者が置かれる場所、墓の話だ、
いいか、死者と言うのは普通、
スターチャイルドの様に人工的に細工を施した施設に、
一人きりで置かれている訳じゃないんだ、
社会的な規模の飢餓や伝染病の大流行で死んだ場合、
死体はあちこちに転がる事になる、
死体は1つではない、それに大抵の場合、
遺体は食物を食い荒らすネズミの餌にならない様に
或は伝染病をまき散らす媒体にならない様に、
適切な処置を施されて同じ墓に眠る事になる、
古い時代だったら土や洞窟の中に大量の死体を葬っていた、
虐殺の場合も同じで、被害者の遺体は決まった場所に集められる、
虐殺に加担した人々の戦意が低下しないように、
或は病疫の発生源にならない様に遺体を1カ所に集めて処理をする、
内戦の場合は尚更だ、
加害者はその国で暮らし続ける訳だから遺体を放っておく事は出来ない、
ホロコーストの様に被害者が生前強制的に集められる場合もある、
集団自殺の場合も同じ、
遺体は敵対者や発見者によりその内きちんと処理される、
集団自殺が歴史の闇に埋もれて遺体達が誰にも気が付かれない場合もある、
その際は1つの建物や洞窟の中に複数の人骨が転がっている訳だ、
連続殺人犯は決まった場所に遺体を隠す、
或は同じ方法で遺体を処理する、
カタコンブは話した通り集団墓地だ、
これらの事とスターチャイルドの場合を研究者達は比較する、
すると手を加えられた洞窟に、
1体の頭蓋骨だけで放置されていたスターチャイルドは、
飢餓や伝染病で死んだ子供の遺体でもなく、
虐殺された子供の遺体でもなく、
集団自殺に巻き込まれた子供の遺体でもなく、
連続殺人者に殺され子供の遺体でもない事が分かった、
遺体が1つだけなのだから洞窟はカタコンブの様な集団墓地でもない、
現在研究者達は洞窟を神殿または祭壇と捉え、
頭蓋骨をそこに掲げられた聖なる物だという結論を出したんだ、、
オメルカの死者の日も特別な力があると考えられていた骨を崇める儀式だった、
もしかして洞窟はオメルカ文明の神殿で、
スターチャイルドこそがこの特別な骨なのかもしれない、
スターチャイルドの頭蓋骨は炭素年代測定に描けられている、
測定の結果、骨は900年以上前の物だと判明した、
オメルカとスターチャイルド、年代的には一致するんだ、
ところで不死や驚異的な治癒力って現実にあると思うか?、
あるかもしれないという見立てと想像、
そして実際に残されている少ない情報なら話す事が出来る、
アステカ人は多くの人間を生け贄に捧げた、
大抵は戦争をして負かした国の人間だ、
自国民が選ばれる事もあったけどな、
なんせ生け贄となる事、神に捧げられる事は名誉だったからな、
生け贄に選ばれ人間は切り刻まれ炎で燃やされる、
伝承によれば焼かれて切られても生き残った人間がいたらしい、
理由は伝わっちゃいないがな、
残された情報による、生き残った人間は神が受け取るのを拒んだ、
悪魔の精神を持つ人間と言う事らしい、
イタリア生まれの航海士コロンブスは、
スポンサー探しの末スペインに雇われた、
欧州文明に属す者でアメリカ大陸を初めて見つけたコロンブス
彼はさっそく航海の成果をスポンサーに報告した、
報告を受けたスペインは軍隊を派遣して先住民を虐殺して略奪を行った、
コロンブスの目標は新大陸に眠る黄金だった、
彼は先住民たちが保有していた金銀財宝と共に、
先住民らが語った様々な伝説をスペインに持ち帰っている、
その中には不死の伝説があった、
この事は現存するバルトロメ・デ・ラス・カサスの日記に書かれている、
バルトロメはキリスト教の司祭でコロンブスの航海に随員している、
彼はスペイン軍による先住民虐殺を目撃している、
当時から虐殺に対する批判的な文章を多く残していた、
そんな彼の日記は現在大英博物館に保管されていて、
そこにコロンブスが先住民から拷問の末に聞き出したと言う、
不死伝説の事が書いてある、
そこにも死者の日における特別な骨の重要性が書いてある、
この後にスペインはコンキスタドールを使って中南米を支配した、
彼らの目標は新大陸の資源と奴隷としての人材、
従属国の産業が生み出す富だった、
しかし中には、
コロンブスが持ち帰った伝説を追い求める為に、
中南米を征服した奴も居たかも知れない、
スペインによるコンキスタドールの過程を調べた事がある、
奴らは先住民の文化を破壊する一方で、
彼らの歴史や文化に関する聞き取り調査の様な事をしているんだ、
コンキスタドールは何かを探していたのかもしれないな、
ナチスドイツのヒトラーだって聖杯を探し求めていたって言うだろ、
権力者の夢ってのはきっと不死に向かいがちなんだろう、
スペイン人によって持ち込まれた欧州大陸の病気によって、
先住民の殆どは死んでしまった、
欧州大陸の病原菌に対してアメリカ大陸の人々は免疫がなかったんだ、
だから普通なら子供でも死なない様な病気でアメリカ大陸の人々は死んだ、
だが生き残った人々も居た、
偶然的に免疫を持っていた者達だ、
偶然だがら家族の中で父と母や幼い子供達が死んで、
生き残ったのは年老いた老婆だけという事もあった、
しかし村人全員が欧州の病気に感染するも、
その殆どの者が回復して生き残ったという部族がある、
奇跡的な回復率を得た部族はチワワ州に定住していた、
そして彼らは空から降りて来る存在を信じていた、
あのチワワ州の伝説を同じ物だよ、
これは偶然かな?なんで部族が丸ごと病気から生き残れた?、
コンキスタドールは彼らの集落も襲い略奪を働いている、
だが部族が宗教的に重要な物と考えていた骨を、
略奪者が発見したと言う記録はない、
コンキスタドールは確かに略奪者だったが、
略奪は当時のスペイン政府により計画実行された物だった、
だから事細かな記録が残されてると言う訳だ、
不死があるという見立てでこの出来事を語るとおかしな所がある、
驚異的な回復力は骨のお陰だと考える、
骨の力によって部族が救われた、
だが骨は見つかっていない、
骨は崇めているだけで不死や治癒の力を与えてくれるんじゃないのか?、
コンキスタドールに襲われた際、部族の誰かが隠したか?、
コンキスタドールが見つけて隠し持っていたのか?、
もう1つ残された可能性がある、
部族の連中はスターチャイルドの骨を食ったんだ、
これで部族が丸ごと生きていた事も、骨が見つからなかった事も説明がつく、
スターチャイルドの骨は頭蓋骨1つしか見つかっていない、
宇宙人と地球人が交わり子を残すという神話が本当ならば、
子供が1人だけという事はないはずだろう?、
だがスターチャイルドの骨は頭蓋骨、その1つしか見つかっていない、
他の骨は何処に消えたんだ?、他にも神殿があるのか?、
骨は崇められるだけでなく、消費されていたんじゃないのか?、
アメリカとメキシコの戦争、米墨戦争の顛末は話したよな、
アメリカが勝った戦争だ、
1848年グアダルーペ・イダルゴ条約が結ばれた、
これによりメキシコはアメリカに多くの土地を奪われた、
戦争に負ければ土地を奪われ多額の賠償金を求められる、当り前だ、
だがグアダルーペ・イダルゴ条約ではメキシコは土地を奪われたが、
アメリカから金をもらっている、土地の譲渡代金という名目だな、
それも1ドルとかそういった形式的な物ではなくて、
1500万ドルもの大金をアメリカは支払ったんだ、
1500万ドルだぞ、大金だ、勝った国が払ったんだ、
この金でアメリカが得たのは土地だけじゃない、
メキシコの代表者とアメリカの外交官ニコラス・トリストが、
条約に調印した時だ、
メキシコの外交官ベルナルド・コウトは、
トリストにいくつかの品物を手渡している、
献上品だな、
終戦と友好を記念してという事らしい、
民族的な工芸品とかだな、
メキシコからの贈物の中には珍しい物があった、
メキシコで採取された石や生物の標本や化石だ、
石というのはメキシコに落ちた隕石の欠片の事だ、
標本は植物の押し葉標本と動物の剥製、
化石は恐竜や動物の古い骨の事だ、
学術的な目的の為にアメリカに譲渡されたというのが表面上の理由だ、
1970年代には世界的な宇宙人ブームが起った、
エリア55やナスカの地上絵宇宙人作成説や、
宇宙人を解剖した場面を撮影した動画とかが流行った物だ、
当時様々な噂や陰謀論が語られた、
中にはグアダルーペ・イダルゴ条約について触れた物もあった、
曰く、条約が結ばれた際に献上された隕石は、
宇宙的な特別な力を持つ物で、
宇宙的な特別な力ってのは宇宙人の技術や未知の細菌と言う事らしいが、
ともかく米墨戦争アメリカがメキシコから、
その隕石を奪う為に起した戦争だった、
そしてアメリカがメキシコに渡した土地代1500万ドルの本当の理由は、
終戦後も隕石の居場所を隠していたメキシコ政府に、
隕石との交換条件としてアメリカが支払った金だという説だ、
メキシコからの贈物は一般には未公開のままテキサスの研究所に保管された、
テキサスは南北戦争の戦場になった、
研究所は戦争に巻き込まれてその最中で石は行方不明になってしまったんだ、
この話しには続きがある、
南北戦争はこの隕石を巡っての争いなのだと言う話もある、
テキサス州は南軍に属していた、
研究所に保管された隕石は戦時中に紛失している、
北軍が戦争の混乱の中で奪ったとも、南軍の司令官が秘密の場所に隠したとも、
また民間人、盗人がドサクサに紛れて盗んだとも言われている、
グアダルーペ・イダルゴ条約に関するこれら一連の話では、
メキシコが渡した隕石の欠片ばかりが注目されている、
だが俺が注目するのは化石の方だ、
化石の中にスターチャイルドに関連する骨が含まれていたかも知れない、
メキシコからの贈物は未公開だが、目録は公開されている、
条約が締結された場に立ち会ったメキシコ側の政府高官が証言しているんだ、
目録の中にこんな記述がある、化石……植物、海洋生物、骨、
話には続きがある、
南北戦争で勝利を収めたのは北軍だ、
北軍の大将はリンカーンだ、
リンカーン南北戦争終結した年に、
南軍を支持するブースと言う男に殺された、有名な事件だ、
有名な話だがその1年前にもリンカーンは暗殺されそうになっている、
自宅からホワイトハウスへの出勤途中、馬に乗っている時に狙撃されたんだ、
暗殺者が放った弾丸は帽子を貫通した、
ところが不思議な事にリンカーンは無傷だったんだ、
被っていた帽子の中心を弾が貫通したのにだ、
リンカーンはその1年後に暗殺された、
この時は暗殺者ジョン・ブースの持つ拳銃から放たれた弾丸は、
確実にリンカーンの後頭部が貫いた、
だがリンカーンが絶命したのは撃たれた10分も後だ、
そのあいだ彼は傍らに居た妻と言葉を交わしていたと言う、
36年後、埋葬されたリンカーンの遺体が入った棺は発掘される、
遺体盗難防止の為にもっと強固な墓地に棺を映す事になったんだな、
その際、遺体の確認の為に棺は1度空けられている、
リンカーンの遺体を観たのは23人で、
全員がリンカーンの遺体には一切の腐食が無く、
生きている様だったと語っているんだ、
もちろん遺体には防腐処理なんか施されてはいなかった、
暗殺の失敗、脳みそをぶちまけられても生きていた彼、
棺の中の遺体の状態、
もしかして骨はリンカーンの手に渡っていたのかもしれない、
彼もあの部族と同じ様に骨を食っていたのかもしれない、
病気から回復した部族の様にな、
ハスターを創造したビアス
ビアスの創造を利用したラブクラフト
ラブクラフトビアスと何回も会話をしているんだ、
夢の中でな、
後に出版された彼の日記に書いてある、
ラブクラフトは偉大な作家で彼に関する研究や論文が無数に世に出ている、
その中の1つが彼の生い立ちを取材して描いた物だ、伝記という奴だな、
中には面白い事が書いてある、
ラブクラフトがまだ偉大な作家になる前の事、
夢の中でビアスと会っていた時期、
ラブクラフトが住む町の住人の夢の中にもビアスが出てきたと言うんだ、
ビアスは住人達の夢の中で彼らに対して、
メキシコでの出来事や制作中の物語について語った様だ、
暫くしてラブクラフトビアスの夢を見なくなると、
住人達もビアスの夢を見なくなった、
ビアスは71歳で行方不明になった、
これはその17年後の出来事だ、
ビアスがもし生きていたら88歳になる、
ラブクラフトの証言によれば、
彼や住人の夢の中に出て来たビアスは、
夜ごとに姿を変えている、
老人や青年や中年に姿を変化さている、
だが不思議な事に一目彼の姿を観るとそれがビアスであると分かったと言う、
ビアスが行方不明になったのはメキシコはチワワ州だ、
わかるな?、洞窟に眠るスターチャイルドが少女によって発見された場所だ、
ビアスが行方不明な理由にはいくつか噂があったよな?、
1つが深い洞窟の奧に行って帰って来なかったという物だった、
この説の凄い事は、ビアス自身の証言が残っている事だ、
ビアスは行方不明になる直前に滞在した村で住人と会話をしている、
酒場の客や宿の店主なんかとね、
彼ら曰くビアスは洞窟に向かうと言っていた、
その洞窟はメキシコの伝説や神話を調査する為には、
重要な場所だと言っていた様だ、
きっとビアスは洞窟に行った、その奧で何かを得たのかもしれないよな、
あの薄暗く青い水が所々で湖になっている洞窟の奧で、
似た様な話がある、
メキシコ革命で活躍した将軍達の話をしただろ、
重要なのがビリャだ、
ビリャは革命後はチワワ州で農園主として暮らしていた、
そして革命戦争が終わった数年後に暗殺される、頭を割られて、
ところがビリャの死後も彼の事を目撃したという証言が結構な数、
残されているんだ、
まあよくある話しかもな、イエス・キリストだって一度は復活してるんだ、
ビリャが復活してもおかしくはない、
この復活劇の舞台もチワワ州だ、
ビリャとスターチャイルドを関連づける出来事は他にもある、
覚えてるか?カランサがメキシコ大統領だった当時、
ビリャがアメリカと小競り合いを起した事を、
ビリャはアメリカ人を殺した、
報復の為にアメリカ政府はビリャ討伐隊を結成、派兵した、
そんなアメリカ軍相手にビリャが逃走の舞台として選んだのがチワワ州だった、
討伐部隊の兵数は12000人、
この作戦で米軍は初めて航空機を使用した、
ビリャ捜索の為に空からの眼として飛行機を使ったんだ、
なのにビリャはたった1度もアメリカ軍には捕まらなかった、
ビリャがただ逃げるのが上手かっただけかな?、
討伐隊の副官はパットンだ、
パットンは2回の世界大戦で陸軍の大将として大活躍する、
彼はこのビリャ捜索作戦で武功を上げている、
パットンは数名の部下を連れてビリャの副官と戦闘した、
そして副官を殺害している、一般的にはそう言われていた、
パットンの伝記も多く作られている、
中には彼が監修した物もある、
そこにはメキシコで行ったビリャの副官との戦闘について、
一般的な資料とは別の事が書いてある、




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